寂しがり屋の桐谷美玲に、綾野剛が「女性は強い」

インタビュー

寂しがり屋の桐谷美玲に、綾野剛が「女性は強い」

人気脚本家の北川悦吏子が脚本・監督を務めた、中山美穂主演の映画『新しい靴を買わなくちゃ』(10月6日公開)で、遠距離恋愛のカップル役を好演した桐谷美玲と綾野剛。ふたりが演じるのは、中山美穂と向井理とのラブストーリーと同時進行で進む、もう一組の男女の物語だ。ふたりにインタビューしたら、撮影秘話から転じた男と女の話に花が咲いた。

ラブストーリーの名手と言われる北川が、どういうふうに演出をしたのかが気になるところだ。綾野はこう分析する。「北川さんは、自分の台本を体感し、具現化してくれる人間を初めて見るので、ご自身が観客になった立場で見てみたい、そういう感覚の演出方法だったように思えます」。

桐谷は、現場で幾つかセリフを変更したのが印象的だったと語る。「カンゴ(綾野剛)に、『頑張れよ、カンゴ』と言うセリフがあるんです。もともとは『ありがとう』みたいなニュアンスの違う言葉でしたが、こうした方が格好良いよねって話になって。現場でインスピレーションが働いたんでしょうね。絶対こうしようって、ふたりで相談してやりました」。

北川組でプロデューサーと撮影監督を務めた岩井俊二は、長回しの撮影を駆使して、二組の男女の繊細な心のあやを活写した。桐谷扮するカゴメと、綾野扮するカンゴの会話劇も、自然体そのものだ。桐谷は無邪気に愛を口にするスズメについて、「あまり似てるところってないんですけど、実は私もちょっと寂しがり屋だったりはします。でも、あの空間にカンゴとして綾野さんがいて、そこに私がいると、自然とあの空気になれました」と語る。

綾野のカンゴ役のとらえ方はまたユニークで、「男と女ってのは、生命体として違うので」と、男女の話にスライドさせていく。「男って不安定なんです。染色体も女性はXX、男はXY。女性の方が安定感があるし、肝がすわってる。生命体としては圧倒的に男より女性の方が強いんです」。

本作では、中山美穂扮するヒロインが、気持ちを切り替えて前へ進もうと「新しい靴を買わなくちゃ」と口にするセリフが心に響く。ふたりは、これまでそう思えた瞬間ってあったのだろうか? 桐谷は仕事を始めた頃のエピソードを語ってくれた。「色々やらせていただくと、周りからあれこれ言われることが増えていって、それが嫌だなって思っていた時期があったんです。でも、高校時代の友人が、『本人を知らない人の言葉なんて聞かなくても良いよ。私たちのことだけ信じていれば良いじゃん』と言ってくれたんです。その時から、全員が私のことを好きなわけじゃないから、いろんな人の意見も大事だなって前向きにとらえられるようになりました」。

それを聞いた綾野は、感心しながら、「美玲ちゃんて力強いよね。細いし、ちゃんとご飯を食べているのかな?って心配になるんだけど、ちゃんと力強く踏ん張っている印象があります」と言う。桐谷は恐縮しながら、綾野について「裏表もなく、本当にそのままの空気感の人。今回は私を引っ張っていってくれました」と笑顔で語った。

『新しい靴を買わなくちゃ』では、中山美穂と向井理が紡ぐ主旋律の恋はもちろん、桐谷と綾野が奏でるもう一つの恋にもぐっと来る。折しも人恋しい秋ということで、パリを舞台にした大人のラブストーリーにどっぷり浸ってみるのもお勧めだ。【取材・文/山崎伸子】

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