『ツナグ』初日に松坂桃李が樹木希林を「底が知れない人です」と笑顔
吉川英治文学新人賞を受賞した辻村深月の同名小説を映画化した『ツナグ』の初日舞台挨拶が10月6日、TOHOシネマズ日劇にて開催。松坂桃李、樹木希林、桐谷美玲、橋本愛、大野いと、遠藤憲一、平川雄一朗監督が登壇した。映画単独初主演を務めた松坂は、「どうしてもやりたい、誰にもやらせたくないと思った役です。この作品に自分の名前を刻めたことが嬉しくて仕方ありません」と万感の思いを語った。
本作は、死者との再会を望む人々と、その仲介を司る“使者(ツナグ)”として、他人の人生に深く関わっていく一人の少年の葛藤と成長を描く物語。松坂と樹木は、公開に当たって精力的に映画のPR活動に務めてきた。樹木は「最初はどうかなと思ったけれど、今に至ってはこの成長ぶり。マイクを離さない!今日で私はご無礼します」と松坂の成長ぶりを語り、会場の笑いを誘った。これに対して、松坂は「樹木さんは本当に底が知れません。結局、最後まで樹木さんのことをつかめなかった」と笑顔を見せると、樹木も「底なし沼の樹木です」と微笑むなど、息もぴったり。実際に心をつないだ様子が伝わってきた。そして桐谷も「心に残る作品になった」、橋本も「一字一句が勝負どころだった。毎日が自分にとって大事なシーンだった」と、それぞれが作品への強い思いを話してくれた。
また、この日は映画上映後の舞台挨拶とあって、観客とのティーチインに臨んだ。「自分で思わず涙してしまったシーンはありますか?」と聞かれた松坂は、「親子の部分にはぐっときましたね。あとは自分の名前がエンドロールで上がってきた時にぐっときた」と明かし、会場の拍手を浴びた。続いて、「実際に“ツナグ”がいたら会ってみたい人は?」との質問に答えることに。松坂は「卑弥呼。もうその時代に地球儀があったらしいんですよ。その真相を聞いてみたい」、桐谷は「沖田総司に剣術を教えてほしい」、大野は「聖徳太子に10人に質問されても聞き分けられるコツが知りたい」と話し、若手キャストが歴男・歴女の一面を披露した。
実際に親友を亡くしたという人からの「遺された者にとって大事なものとは?」との質問に心を込めて答えたのが橋本。「そこで負けてほしくないし、前を向いて笑顔で生きることが最大の恩返しになると思います」と語り、樹木も「生きている者は、生き生きと生きるのが良い」とうなずき、人生の先輩としての貫禄を見せていた。
最後に松坂は「映画には3つの別れがあると言います。クランクアップ、作品ができあがった時、お客さんに届けた時。今、3つ目の別れの瞬間にいます。寂しいですが、皆さんに出会えて嬉しい。感謝の気持ちを伝えたいです」と、客席に向かって深々と頭を下げた。松坂の真摯な人柄のように、真っ直ぐな人々の姿が心を打つ本作。この連休は、人との絆が感じられる『ツナグ』で、大切な人とのつながりを確かめてみてはいかがだろうか。【取材・文/成田おり枝】