ハリウッドも絶賛したインドネシア発の壮絶アクション『ザ・レイド』の若き戦士たちを直撃!
インドネシアからとんでもないハイパーアクション映画『ザ・レイド』(10月27日公開)が上陸。第36回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門観客賞の受賞をはじめ、各国の映画祭で絶賛され、全米でも大ヒットした本作。既にPART2の製作と、ハリウッドリメイク版も決定した『ザ・レイド』を引っさげ、主演のイコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンが来日。彼らにインタビューし、本作で披露している最強の格闘技プンチャック・シラットのアクションについて語ってもらった。
20名のSWAT隊員たちが、麻薬王を逮捕すべく、彼らが潜む高層マンションへ乗り込んでいく。そこでSWAT隊員とギャングたちの壮絶な戦いが繰り広げられる。イコが演じたのは、身重の妻を持つ主人公のSWAT隊員・ラマ役だ。ヤヤンはギャングのマッド・ドッグ役に扮した。彼らは本作で監督を務めたギャレス・エバンスの前作『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』(09)でW主演を張った仲でもある。
シラットのすさまじいアクションが全編に散りばめられた本作。イコは「3人でアクションを構築していった」という。「おおまかな基礎になる振り付けをまずふたりで考え、それをギャレスに提示します。ギャレスがその振り付けを見て、脚本のどのシーンでどのアクションを使うかを考えるというプロセスです。それを当てはめていき、最後はこういう形で終わってほしいといったリクエストがギャレスから返ってくる。そこからまたふたりで練り直していくという作業でした」。
イコはSWAT隊員の役に扮するため、実際にインドネシアの海軍訓練施設へも足を運んだ。「キャンプに入って、みんなで訓練を受けました。銃の撃ち方から武器の扱い、建物の中での振る舞い方、侵入の仕方、上官への接し方、暗号の習得など、どうしたらリアルに見えるのかを考え、徹底的に役作りをしました」。
ヤヤンは、役柄上、特に軍隊の訓練を受けたりはしなかったが、狂気に走るマッド・ドッグというキャラクターを演じること自体が難しかったと振り返る。「監督から度重なるアドバイスをもらい、マッド・ドッグがどういう人物かを話し合いながら、徐々に体も心も成りきるように努力していきました。最終的には、自分の死をも恐れないキャラクター、敵を殺すことに喜びを感じるマッド・ドッグの人物像ができていきました」。
全編ノンストップで展開されるアクションに度肝を抜かれる本作。怪我をすることも多いというイコ。「たとえば、木片で襲われるシーンがあるんですが、その時は木片を受け止めるシーンで前から撮るカットを15テーク、後ろから撮るカットを17テークを撮りました。同じ箇所に木片を受け続けるので、そこだけ腫れ上がるんです。合計32回、同じところを殴られ続けたので、腫れがなかなか引かなかったです」。
ヤヤンは「僕は特に外傷はなかったけど、演技をするうえで、心が折れかけました」と苦笑いしながら、「でも、イコとか監督、チームのみんなのおかげで乗り越えることができました」と語ってくれた。すると、イコも「仲間の存在が大きいです。みんなで作っているので、痛くても、楽しく撮影することができました」と笑顔を見せた。
本作で、イコたちがこだわったのは、真剣勝負のアクションだ。ヤヤンは語る。「幾つかのシーンで、飛び散る血を表すためにCGを使っているけど、ほとんどが本物のアクションです。生身の肉体でお見せしたいという思いはみんなで一致しているので。振り付けを考える際にも、こうやったらギャレスが喜ぶんじゃないかと思うアクションを常に意識してやっています。全ての技術を余すことなく見せたいので、一瞬たりとも手を抜けないですね」。
アクションスターとしての志の高さがひしひしと感じられたイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアン。イコはキアヌ・リーブスの初監督作『Man of Tai Chi』にも出演予定だ。そして本作の後、再びギャレス監督と3人でタッグを組んだ続編『Berandal』も、2013年1月から撮影がスタートするそうだ。色々な意味で注目度大のふたりなので、まずは『ザ・レイド』を見て、彼らの勇姿を目に焼き付けてほしい。【取材・文/山崎伸子】