石原慎太郎が東京国際映画祭で「次は映画監督になる」と意欲!
第25回東京国際映画祭特別招待作品『青木ヶ原』(2013年正月公開)の舞台挨拶が、10月26日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、原作・企画を務めた石原慎太郎、新城卓監督、出演の勝野洋、矢柴俊博が登壇。「昨日、都知事の辞職を明らかにした石原都知事です」と司会から紹介されると、石原は「バンザーイ」と両手を挙げ、新城監督も「石原さんが昨日、幸いにもどでかい爆弾をぶん投げてくれたので、(お客さんが)来てくれると思った」とコメントし、「石原さんのご尽力でできた作品。感謝しています」とお礼を述べた。
本作は、石原慎太郎の短編集「生死刻々」の一編を映画化したもので、万物の生命が生い茂る青木ヶ原の樹海を舞台に、はかなくも美しい男女の純愛を描く悲恋物語。主演を務めた勝野は、「新城監督とは30年ほどの付き合い。映画っていうのは良いもんですねえ。現場は職人さんの集まりでコツコツ、一歩、一歩作っていくんです。富士山を見ながら、日本の最高の場所で素晴らしい作品が作れました」と作品への思いを力強く語った。
石原と新城監督とのタッグは、『秘祭』(98)、『俺は、君のためにこそ死ににいく』(07)に続き3作目となる。石原は「新城さんは腕を上げてきたんだれども、ガラが悪いから作品の評価がいまいちなところがある」と石原節で会場の笑いを誘った。本作では、数シーンだが石原が都知事役で出演しているといい、「この作品の唯一の欠点は僕のセリフが短いこと」とおどけ、続けて「僕は沖縄が好きなので、沖縄に関する物語をふたりでまた作りたい」と意欲を語った。
さらに、石原は「映画っていうのは良いもんだねえ」と感慨深けに話し、「知事を辞めて、映画監督をやるつもりだったんだけれど、ちょとまた道を間違えちゃった。この国を見ていられないからね。その次は90を過ぎても映画を撮るよ。絶対に人に撮らせないと思っているものをふたつ持っている。これを自分で撮りますよ」と語り、拍手を浴びた。隣で聞いていた新城監督は、「石原さんは非常に良い人。ただ、うるさい人なんですよ。誤解されやすいけれど、素晴らしい人」と盟友を讃えた。
信頼し合ったスタッフ、キャストたちが胸を張る『青木ヶ原』。年間自殺者が3万人を超える現代日本にとって、命のあり方を問いかける真摯な作品である。【取材・文/成田おり枝】