『人生の特等席』クリント・イーストウッド「20年ぶりに演技に専念することにした」
クリント・イーストウッドが『グラン・トリノ』(08)以来、4年ぶりに俳優復帰した『人生の特等席』(11月23日公開)。本作で伝説的なスカウトマン、ガスを演じるイーストウッドの独占インタビュー映像を公開!
クリント・イーストウッドは1995年、ユニバーサル・スタジオの契約俳優としてエキストラデビューを果たし、『荒野の用心棒』(65)、『夕陽のガンマン』(67)でブレイクを果たした。映画館に客を呼べるドル箱スターとなった彼は、「他の人が興味を持たない脚本でも映画化の価値があるかもしれない。自分のキャリアを少しでもコントロールしたい」と製作会社を立ち上げ、ドラマティックな名作を生み出し続けてきた。
現在は「伝説の映画人」と呼ばれるまでになった彼の子供の頃の夢はミュージシャン。中学時代に無理矢理に主演させたれた演劇を振り返り、「人前に立つなんて悪夢に思えた。演劇なんて興味もないし、理解もできなかったよ」と明かしている。そんな経験もあり、「中学の演劇を思い出して、演劇科は避けた(笑)」と語るとおり、大学入学当初は経営学を専攻。しかし、劇団の知り合いが多くなった彼は、次第に演劇に興味を持ち始め、アルバイトの傍ら、演劇の授業を受けるようになり、バイト感覚でユニバーサル・スタジオのテストを受けて合格。「良い話だったよ。定期的な収入がある職だからね」と振り返る。
やがて、演技にのめり込んだ彼は、「俳優として、何でも吸収しようと何にでも挑戦した。そして、ある日突然、演技のコツのようなものを感じたんだ」と、スタジオ契約俳優の時にターニングポイントがあったことを語っている。その後、テレビシリーズの「ローハイド」で一躍名が知られるようになり、『荒野の用心棒』や『ダーティハリー』シリーズ、ヒーローや孤高のアウトローなどを演じ、その存在感を示した。さらに、監督としても『許されざる者』(92)、『ミリオンダラー・ベイビー』(05)など、その手腕を見事に発揮。現在でも映画界に君臨するレジェンドとして名を馳せる。
そんな彼に弟子入りしたのが、本作で初めて監督を務めたロバート・ロレンツだ。20代の頃から19年間もイーストウッドと組んできたロバートは、『グラン・トリノ』(09)の撮影中に長年の夢である監督への希望を打ち明けたという。公開された映像では「ロバートはとても頭の良い男なんだ。たぶん、ずっと監督をやってみたかったんだろうと思うが、それを口に出したのは数年前なんだよ」と愛弟子ロバート・ロレンツについて話している。そして、「とにかく私は脚本を気に入って、監督しないで演技だけなんて20年ぶりだったが、『ロバートが監督するのにまさにピッタリの素材だ。俺は出演だけで良い』と思ったので演技に専念することにしたんだ」と、監督のバトンを愛弟子に託したことをあの独特なし枯れ声で語る。
さらに今回、イーストウッドが演じるガスは彼曰く、「彼は年老いたスカウトマンで健康に問題を抱えているが、誰の助けも同情もほしくないし、とにかく頑固なんだ」と『ミリオンダラー・ベイビー』や『グラン・トリノ』で世界中を魅了した、誰もが見たい、もう一度見たい頑固老人であることを説明している。
クリント・イーストウッドが約20年ぶりに演技だけに集中した老スカウトのガスと、そんな彼が唯一信頼し、自身への演出を許したロバート・ロレンツが紡ぎ出す作品を是非、劇場の特等席で見ていただきたい。【Movie Walker】