サー・イアン・マッケラン「白より灰色のガンダルフの方が好きだし、演じていて楽しいよ」
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのガンダルフが帰ってきた!演じるのはもちろん、サー・イアン・マッケランだ。いよいよ12月14日(金)に公開を迎える『ホビット 思いがけない冒険』で、今度はホビットのビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)を危険な旅へと誘う。残念ながら、ウェリントンのワールドプレミア、そして12月1日に行われたジャパンプレミアへの参加はなかったものの、ニューヨークプレミアには姿を見せ、大勢のファンから喝采を浴びていた。今回、サー・イアン・マッケランに本作について話を聞いた。
――ガンダルフを再演することに不安はありましたか?
「不安はなかった。それより全く新しいキャラクターを演じるような興奮といった方が良いだろう。昔行った土地を再び訪れるのが、新しい土地に行くのと同じように魅力的とは言えない。それに、故郷イギリスから数年離れることになる。思い入れも大きかった。でも結局は、他の人にガンダルフを演じられるのが我慢できなかったんだ。それに僕が彼を演じなかったら、動揺する人たちがたくさんいると小耳に挟んだ。そのことは多くのことを前向きに働かせたよ。ニュージーランドに戻るのは素晴らしかった。素晴らしい映画になるとわかっていたから、再び関われること全てが今は必然に思える。これらの映画が実際に作られることになるだろうということを疑ったことはなかったよ!」
――白のガンダルフより、灰色のガンダルフを再び演じるのは何か違いがありますか?少し茶目っ気の多い人物ですよね
「監督のピーターと僕はふたりとも“ガンディ”、つまり灰色のガンダルフの方が好きなんだ。彼の方がもっと変化に富んでいるし、少し人間味が多いと思わないかね!?彼は色々な場面に姿を現すが、白のガンダルフはもっと達成すべき使命に集中している。彼は司令官のような感じだし、白のガンダルフから多くのジョークは聞かれない。だから歳を取った灰色のガンダルフの方が気楽なキャラクターだし、演じていて楽しいよ」
――ここでのガンダルフの変化とは何でしょう?彼はビルボのドアに印を残して彼にトリックを仕掛けますが、その後にもっと暗く、もっと深刻な領域に入って行きますね
「あれはトリックじゃないんだ!彼はビルボに言う。真面目すぎる生き方を止めるように彼を勇気づけるんだ。『これは君にとって良いことだ』とね。それにある意味では、ガンダルフの言うことは事実だ。冒険には危険がつきものだが、ガンダルフはもっと充実感のある人生を生きるビルボを見たい。ガンダルフがビルボに初めて会ったのは、彼が幼い頃だった。そして何年か後にその少年が成長し、面白味のない、世捨て人のようになっていることに愕然とする。だから、ガンダルフはドワーフたちを助けることにするが、観客は小説には書かれていない、彼が助ける理由を知ることになる。つまり、どうしてガンダルフは、盗まれた宝を取り戻す多くのドワーフたちを助けるのか?彼らは自分たちだけでそうすることはできないのか?ガンダルフは中つ国が変化しているように見えることを心配している。危険が漂い、暗黒の時代がやって来る兆しがあるという噂が流れていた。彼がこのドワーフたちの旅を見守ることができれば、この特別な冒険の旅の先に何が起こるのかをもっと感じ取ることができるかもしれないと、ガンダルフは考えるんだ。そして、小説にはないが、ドワーフたちが彼らの冒険を進めていく間に、ガンダルフは自分で中つ国を訪れる。そしてガンダルフは全てをつなぎ合わせようとするが、それが『ロード・オブ・ザ・リング』3部作へとつながっていくんだ。だが、キャラクターとしての彼はこれまでどおり、導き手であり、助言者であり、助っ人であり、まとめ役だ。彼は楽しんでいる。パイプが好きだし、酒も好きだし、ホビットたちを愛し、自分の花火を愛している。だが、彼は責任感のある政治家でもあり、魔法使いとして中つ国のことを真剣に心配している。彼のそういう面も見ることになるだろう。つまり、彼もキャラクターとして進化している。恐らく『ホビットの冒険』の中には書かれていない彼の行動の真意を知ることになるだろう。ガンダルフというキャラクターがもう少しわかってくるはずだ」
――映画のトーンはどんな感じですか?軽めの喜劇的瞬間が見られるのでしょうか?『ロード・オブ・ザ・リング』3部作とテーマ的にも雰囲気的にも結びつくことになるのでしょうか?
「最初に『ロード・オブ・ザ・リング』3部作を作った時から、それが問題になることはわかっていた。それらをどうリンクさせるのか?ピーターはしょっちゅう言っていたよ。『この映画を愉快なものにしたい。陽気なものにしたい』とね。僕は時々こう言ったよ。『それはどうかな。これはガンダルフにとって、とても深刻な状況だからね』。ピーターは『そうだが、物語は快活な方法で語られなくてはいけない』と言っていた。キャスティングを見れば、彼がもっとコメディを望んでいたことがわかるだろう。彼はバリー・ハンフリーズ、ブレット・マッケンジー、シルベスター・マッコイといった素晴らしいコメディアンを配役したからね。それに素晴らしい喜劇的センスに恵まれたマーティン・フリーマンや、多くのドワーフたちがいる。ジェイムズ・ネスビットも優れたコメディアンだ。彼ら全員が素晴らしい喜劇俳優だ。だから、たくさんの冒険と共に多くの笑いがあると思うが、世界のどこかに危険に満ちあふれた場所があり、そこでは慎重に自分たちの行動を考え、危険を覚悟しなくてはならないという感覚が織り交ぜられているんだ」【Movie Walker】