なめらかで3D特有のちらつきもない!『ホビット』で初採用されたHFR3Dの魅力とは?
12月14日(金)、本日より日米同時公開されている、ピーター・ジャクソン監督『ホビット 思いがけない冒険』は、完成前からある一つの技術をめぐって、様々な意見が飛び交っていた。その技術とはハイフレームレート3D(以下、HFR3D)である。
では、ハイフレームレートとはいったいどういう技術なのか?まず、フレームとは映写機が1秒に映写するコマ数を指し、現在世界中の映画館で標準とされているのは毎秒24フレーム(=24fps、fpsはframes per second)である。HFRは通常の2倍、つまり48フレーム(=48fps)で撮影、映写する技術なのだ。そして、これはフィルムではなく、デジタル技術として開発されたものである。
ピーター・ジャクソン監督は『ホビット』でHFR3Dを採用した理由をこう答えている。「近年はデジタルシネマになり、映写機やカメラが変わったことで、フレームレートも変えることができるようになった。このフレームレートを変えることでリアリティが出てくるだけでなく、3Dと併せることによって非常に良いコンビネーションで、本物の世界へ、より近付いた表現ができるようになったんだ」。さらに、もう一つ、大きな理由があったという。「最近ではiPhoneやiPadなどで映画が簡単に見られるので、映画館へ行く理由を作るのが難しいということがある。『ホビット』のような大作を最新のテクノロジーを使って映画館で見てもらいたい!その思いからHFR3Dを採用したんだ」。
一般的に、1秒間のコマ数が増えれば、その動きが滑らかに見える他、3D上映に特有のちらつき軽減につながるとも言われている。
監督は続ける。「人間が1秒間に目視できるフレーム数の上限は55fpsだと科学的には言われている。従って、48fpsで撮影した映像は、より人間が実際に目にするイメージに近いんだ。観客が目にする1秒毎のイメージ数がそのまま2倍に増えるというのが一番の利点だね。そうすると映画により没入できるようになる。3Dでの鑑賞を不快に感じる観客ももちろんいるだろうが、これは目がストロービング(人の目の動きや網膜の残像現象により、画像が振動して見える現象)やブラー(被写体ぶれ)、ちらつきを処理しなければならないからだ。HFR3Dにはそれが全くないんだ」と自信を持ってHFR3Dを推奨する。
単純に考えて、1秒間に24コマと48コマでは、どちらの映像がなめらかなのかは明らかだろう。ちらつきもなく、より鮮明な映像が楽しめるうえに、作品に深く没入できるなら言うことなし、なのではないだろうか。「観客が前のめりになるようなものを作り、映画の冒険に引き込みたいね。きっと今まで皆さんが見てきた映画とはかなり違う感覚で見ることになると思うよ。映画館が本来提供するべき、どっぷり浸かれるような豪華な体験を実現するべく、フィルムメーカーが最新の技術を使うのは非常に大事なこと。今は映画館が面白い時代だと思うね」とピーター・ジャクソン監督が語るように、『ホビット 思いがけない冒険』で初めて導入された新技術は、これからの映画作りを大きく変えていくことだろうし、映画館で見たくなる作品も増えていくに違いない。
もちろん、現時点で全ての劇場がHFR3Dに対応しているわけではない。『ホビット 思いがけない冒険』はHFR3D以外に、2D、3D(24fps)、IMAX、IMAX 3D(HFR3D・3D)で見ることができるが、せっかくのこの機会だ。HFR3D対応劇場が近くにある方は是非とも、自身の目でHFR3Dのすごさを体感していただきたい。
ちなみに、3D映画の普及に大きく貢献したジェームズ・キャメロン監督も『アバター2』『アバター3』をHFR3Dで撮影することを明言している。しかも60fpsでの撮影を希望しているとも言われている。ピーター・ジャクソンとジェームズ・キャメロン、このふたりの監督により、HFR3Dが今後のスタンダードになっていく可能性も高いだろう。【Movie Walker】
★『ホビット 思いがけない冒険』のHFR3D対応は全国33スクリーン、IMAX HFR3D対応は全国6スクリーン(ユナイテッド・シネマ札幌、ユナイテッド・シネマとしまえん、109シネマズ川崎、109シネマズ湘南、109シネマズ名古屋、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13)※詳細は公式サイトにて