J.J.エイブラムスが挑む、新たな『スター・トレック』とは!?
『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)のJ.J.エイブラムスが、初夏公開の映画『スター・トレック』のプレゼンテーションのため、主演俳優らを引き連れて来日した。
だが、なぜJ.J.が「スタートレック」なの?と疑問に思う読者も多いのでは? 海外ドラマ「LOST」(04〜)、映画『M:I:III』(06)、『クローバーフィールド HAKAISHA』と新たなプロジェクトを立ち上げるたびに世界の注目を集めてきた希代の映像クリエイターなのだから。それが、熱狂的なファンに支えられて40年以上続いている人気シリーズとはいえ、すでにイメージの確立した、悪く言えば手垢のついたような新作を手掛けるとは…。しかも、今回は監督も兼ねると言う。
だが、プレゼンテーションで上映された予告編とフッテージ映像を見て、そんな懸念は吹っ飛んだ!
まず今回の新作は、シリーズの単なる続編ではないのだ。1966年に創作されたオリジナルのテレビ・シリーズをヒントに再構築されたリ・イマジネーション作品で、カーク船長の若き日を描く“ビギニング”というわけ。青年カークの成長物語を軸に、彼の目を通して宇宙へと進出していく人類の運命と希望が描かれるのだ。
J.J.は言う。「全く新しいストーリーにしよう!というところからスタートしました。もちろん、40年前にジーン・ロッデンベリーが作り上げた精神を汲みつつ、それにインスパイアされた自分たちの映画を作るということです。実際、2人の脚本家のうちの1人は『スタートレック』の大ファンで、もう1人は知っていた程度ですから。そのバランスを取って、本当に楽しめる今まで見たことのない作品にすることができました」。
象徴的なシーンがある。オリジナルでMr.スポックを演じたレナード・ニモイが、未来から来た、老いたスポック役で登場、青年時代のカークと出会う場面は感動的だ。
同時に、J.J.は“未来のスター”を選んだというキャスティングにも自信をみせる。若きカークを演じるのはクリス・パイン。07年にシャイア・ラブーフも受賞した「Star of Tomorrow(明日のスター賞)」に今年選ばれた逸材だ。
「今までアクション・シーンの経験がなく、まぁ何とかなるだろうと思っていたけど、とんでもなかった。この経験から、トム・クルーズやジェット・リーは凄いと敬意を表したい」
エンタープライズ号で通信士を務めるウフーラ役のゾーイ・サルダナも一緒に来日。彼女も昨年、「ヴァニティ・フェア」誌の“若きハリウッド女優10人”に選ばれた注目株だ。
「私はいろんな惑星の言語を操る役だったので、それが大変でした。あと、とても丈の短い衣装だったのも辛かったわ」
フッテージで見ることができたのは数シーンだけだったが、それでもSFアドベンチャーならではの壮大なスケール感と、親密な人間ドラマの両方を兼ね備えていることは十分に伝わってきた。J.J.も、スペクタクルにおける人間ドラマの重要性を強調する。
「ジャンルはSFですが、皆が一緒になって未来の世界を探検し、アクション、ロマンス、友情、家族の絆など様々な要素が入っていて、しかもすべてがポジティブな印象になるよう目指しました。熱狂的なファンも、そうでない人も十分に楽しめる。つまり、未来の『スタートレック』ファンのために作ったのです」【外山真也】