50年も無罪を主張する死刑囚の半生がドラマに
1961年、三重県の小さな公民館で振る舞われたぶどう酒に農薬が混入され、それを飲んだ5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」をご存知だろうか?この事件の犯人として死刑判決を受けながらも、50年にわたって無罪を主張し続けている男の半生を描いた映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』が2月16日より公開されている。
本作でクローズアップされているのは、現在も獄中から無実を訴え続ける死刑囚の奥西勝だ。事件直後に犯行を自白して逮捕された奥西だが、後に「警察に自白を強制された」として無罪を主張。一審では無罪を勝ち取るものの、二審で逆転死刑判決を受け、最高裁への上告も棄却されたため、事件から11年後の1972年に死刑が確定している。しかし、多くの支援者にも後押しされ、現在も再審を求める活動を続けているのだ。
そんな奥西の半生を追った本作は、息子の無実を誰よりも強く信じながら亡くなった奥西の母や、血のつながりのない奥西を献身的に支え続けた支援者の川村の姿と共に、50年にわたって事件に翻弄され続けた人々のドラマを描き出していく。二度の再審開始決定とその取り消しという憂き目に遭う彼らの姿からは、現行の裁判制度に対する問題も浮かび上がってくるはずだ。また、奥西を仲代達矢、奥西の母を樹木希林、そしてナレーションを寺島しのぶが担当するなど、豪華キャストが一堂に会した力作となっている点にも注目してほしい。
2012年6月に東海テレビで放送されて大反響を呼んだ番組を劇場化した本作。東海テレビの取材による貴重な映像も交えながら事件を検証する、意義深い作品となっている。【トライワークス】
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