アン・リー監督、オスカー最多ノミネーション『リンカーン』は「恐れていません」

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アン・リー監督、オスカー最多ノミネーション『リンカーン』は「恐れていません」

第85回アカデミー賞で11部門にノミネーションされた話題作『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(1月25日公開)を引っさげ、アン・リー監督が来日。1月17日にザ・ペニンシュラ東京で記者会見を行った。監督は「本作は、私にとって一番難しい作品でした。4年間かけて作りました」と、本作への思いを語った。

アカデミー賞については「世界で最も大きな賞だけど、芸術的に最も優れた作品が賞を受賞するとは言い切れないと思っています。でも、同業者にノミネートされること、世界中に発言できること、一緒に仕事をした人たちに感謝の言葉を言えることは、名誉に思います」とコメント。さらに「一度、アカデミー賞を取ると、その肩書が一生つきまといます。ニューヨーク・メッツの始球式でも、『アカデミー賞受賞監督のアン・リー監督です』と言われ、完全なストライクを投げてしまいました」と苦笑い。

第85回アカデミー賞で最多12部門ノミネーショントの『リンカーン』(4月19日公開) については「恐れていません」とおちゃめに言いながら、「プレッシャーも感じてません」とキッパリ。「正直、本作は特別なプロジェクトで、幸福感を感じながら作ったから、それだけで満足です。賞はボーナスのようなもので、受賞する、しないは関係ないです。11部門という数字はものすごく名誉なことですが、インド人の俳優ふたりが素晴らしかったのにノミネートされなかった。本来は13部門だったと私は思っています」。

成人した主人公パイ・パテル役の日本語吹替版を務めた本木雅弘については、『シコふんじゃった。』(92)以来のファンだったと言う。「本木さんは素晴らしい映画人。『おくりびと』(08)は、私は2回、妻は8回も見たというくらいの大ファンです。彼はとても繊細な部分を表現できるアーティスト。また、彼は私より遥かに良い、深い意義のあるコメントをされますし、自分の人生をちゃんと生きているので、とても尊敬しています」。

本作は、ブッカー賞に輝いたヤン・マーテルによる同名小説の映画化作品。少年パイは16歳の時、家族が経営する動物園の動物たちを乗せた貨物船で遭難する。ただ一人生き残ったパイだが、その後、救命ボートでトラと漂流する羽目になる。アン・リー監督にとっては初の3D映画となり、あのジェームズ・キャメロンも絶賛した3D映像は是非劇場で堪能してもらいたい。【取材・文/山崎伸子】

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