『シュガー・ラッシュ』『トイ・ストーリー』などジョン・ラセターが語る優れたアニメーション映画の3要素

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『シュガー・ラッシュ』『トイ・ストーリー』などジョン・ラセターが語る優れたアニメーション映画の3要素

第85回アカデミー長編アニメ賞には『シュガー・ラッシュ』(3月23日公開)、『メリダとおそろしの森』(12)、『フランケンウィニー』(12)と、5作品中3作品のウォルト・ディズニー配給作品がノミネートされた。そんなウォルト・ディズニーでアニメーションスタジオのチーフクリエイティブオフィサーを務めるジョン・ラセターが、優れたアニメーション映画の3ポイントを語ってくれた。ジョン・ラセターの長編デビュー作『トイ・ストーリー』(96)と『シュガー・ラッシュ』を比較しながら、3ポイントを紹介する。

1つ目のポイントは予測できないストーリーだ。『トイ・ストーリー』は、おもちゃの世界で起きるトラブルの数々と登場キャラクターたちが抱える、人間的な共感できる悩みなどを描いた、コンピューターアニメーションによる大胆な冒険活劇だ。また、『シュガー・ラッシュ』は、それぞれの役柄を演じているゲームの世界だからこそ起きる仕事への悩み、繊細なディズニー・アニメーションだからこそ描ける各ゲームの世界観、それを股にかけた大胆な冒険活劇となっている。ジョン・ラセターは「先を予測できない、人を引きつけるストーリーで見る者を前のめりにさせること」と語る。

2つ目のポイントは魅力的キャラクターだ。ジョン・ラセターが「印象的な魅力あるキャラクターたちが登場するストーリーであること」と話すように、『トイ・ストーリー』はウッディ、バズ・ライトイヤーなどのオリジナルキャラクターに加え、アメリカで実際に売られるMr.ポテトヘッド、バケット・ソルジャー、つなぐdeござるなど、多数のキャラが登場する。一方の『シュガー・ラッシュ』もラルフ(フィックス・イット・フェリックスの悪役)、ヴァネロペ(シュガー・ラッシュの不具合プログラム)、さらに実在のゲームキャラクターのソニック、クッパ、ザンギエフなど、こちらも色々なキャラが多数登場している。

3つ目のポイントは説得力のある世界だ。「ストーリーやキャラクターが説得力のある世界に置かれていること」とジョン・ラセターが言うように、『トイ・ストーリー』ではアンディが遊ぶおもちゃたちだが、実は人間の見ていないところで話したり、自由に行動したりでき、それを人間に知られてはいけない、おもちゃのルールが存在する。『シュガー・ラッシュ』もゲームセンターの閉店後、実は人間の見えないところで仕事を終えたキャラクターたちが、ゲームの中継地点となるセントラル・ステーションを介して自由に行動でき、人間にゲーム機の故障とみなされてしまう行為(悪役がヒーローを目指すなど)は禁止されているゲームの世界の掟がある。

『シュガー・ラッシュ』、本国アメリカでは「『トイ・ストーリー』のゲーム版のような世界観」「『トイ・ストーリー3』(10)以来のベストアニメーション映画」と評され、何かと共通点が多い。本作でも製作総指揮を務めたジョン・ラセターは「ディズニー映画の特質はハートにあり、それが『シュガー・ラッシュ』の基盤にもなっています。この映画は、私がこれまで関わってきた映画の中で最もおかしい作品の一つであり、クレバーで見事です。しかし、真の意味で見る者の心を不意にとらえる要素は、この作品のハートにあるのです」と明かしている。

その言葉どおり、『シュガー・ラッシュ』は、ミラクルな舞台設定、スピード感あふれるファンタジックな映像、さらにはディズニー・アニメーションでありながら、既存の有名ゲームキャラクターたちも多数登場するというユニークな展開が大きな支持を受け、第85回アカデミー長編アニメーション賞ノミネートをはじめ、アニメ界のアカデミー賞とされる第40回アニー賞(2月2日発表)でも作品賞や監督賞をはじめとする10部門にノミネートされているのだ。第70回ゴールデングローブ賞では『メリダとおそろしの森』にアニメーション賞のタイトルを譲ったものの、現地2月24日(日)に開催される第85回アカデミー賞授賞式でのタイトル奪還に期待がかかる。【Movie Walker】

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