伝説のキャバ嬢を演じた水崎綾女が語る野心「内面のギラギラ感では誰にも負けない!」
元カリスマキャバクラ嬢・立花胡桃の自伝的小説を映画化した『ユダ』が1月26日(土)より公開される。3000人を越えるオーディションで主人公を勝ち取ったのは、これが映画初主演となる水崎綾女だ。「この役は私にしかできないと思った」と並々ならぬ意欲でオーディションに臨んだという水崎。『ユダ』で向き合った自分、そして得たものとは。話を聞くと、たくましい女優魂が見えてきた。
歌舞伎町の夜の世界を舞台に、自信のない女子高生・絵里香がNo.1キャバクラ嬢へと上り詰めていく姿を描く本作。原作に触れた時から、水崎にはビビッと来たものがあったようだ。「主人公と私の人生において、重なるものがたくさんあったんです。私はキャバクラ嬢をやったことはないので、もちろん心理面の部分ですが。『この役は私にしかできない』と思いました。でも、オーディションが進むにつれて、周りは“ザ・キャバ嬢”な方たちも多くて。私には見た目のギラギラ感はありませんが、『内面のギラギラ感では誰にも負けない!』と思って臨みました」。
オーディションの合格は、「10kgやせたら」という条件付きのものだった。「やるしかないという思いでしたね。胡桃さんや監督からは『演技力はピカ一』という言葉をいただいていたので、『あとは体型だけどうにかすれば良いんだ』という気持ちでもありました。でも、標準体重から落としていくのは本当に大変で。1ヶ月しかありませんでしたから!肉体的にもしんどかったですが、今思えば、その飢餓感が絵里香の内面に対するアプローチにもなったんじゃないかと思います。ひもじいと本当にハングリー精神が出てきますから(笑)」。
ライバルを蹴散らし、男をも踏み台にして、幸せを手に入れようとする絵里香。ギラギラと野心をたぎらせ、強く美しく輝いていく反面、心には孤独感が増していく。「自分の人生と重なる」という理由を、こう語る。「私自身、8年間芸能界にいて、華やかな世界にいると思われている。でも、その裏では大変なことがたくさんあって。芸能界に入るまでも、色々と苦しい経験もしました。孤独を感じることが多かったんです。絵里香を演じることは、そんな過去の自分と向き合い、さらけ出すことでした」。
撮影時は精神が削られる思いだったという。「さらけ出すのは、恥ずかしいことではありますね。撮影時は、過去の自分を思い出して泣きたい時もあって。今、弱音を吐いたら駄目だ。クランクアップまで涙はとっておこうと思っていたのですが、いざ終わってみたら、何だかそういう気持ちも飛んでいっちゃって(笑)!寂しいという気持ちがあったからこそ表現できるものもあるし、自分のトラウマや嫌な思い出も、この作品をやることによって克服できた気がしています。女優という仕事は、トラウマさえも引き出しになるんだなと。自分の苦しい部分と向き合ったことで、胡桃さんからも、『原作のユダとは違う、水崎綾女のユダになったね』と言ってもらえて。嬉しかったですね」。
監督は女流監督の大富いずみ。映画製作チームも女性中心に集められたという。濡れ場をいとわないことも絵里香役に欠かせない条件だったが、女性目線で描かれる濡れ場は、愛に出会えた喜びにあふれたものとなった。「濡れ場はいとわなかったですね(笑)。夜の世界を描いたものって、絡みや濡れ場がつきもの。でも、この映画では、わざとセクシーなシーンを作ったというよりは、好きになって愛し合ったふたりが求め合うという、リアルな表現ができた。本能で求め合うというのは、ナチュラルなことですから。他にも、女性って『大丈夫』っていう時ほど、優しくしてほしい時だったりしますよね。そういう、女性にしかわからないサインも描かれていて、女性に共感してもらえる映画になったと思います」。
身も心も体当たりで挑んだ渾身作。自身にとっては、どのような作品になったのだろうか。「女優としても、人間としても大きなキーポイントとなった作品です。でも、公開されて、皆さんに見ていただいた後は、この作品すらも踏み潰して、のし上がっていく自分でありたいですね(笑)。これは通過点。『ユダ』を経て、色々な役につながって、広がっていくと良いなと思います。『ユダの時は良かったね』って言われたくないですから!」。
意志の強さが感じられるが、目指す女優像を聞くと、「よく昔から、『水崎綾女は、芯があるスポンジみたいだ』って言われるんです(笑)。すごく吸収するけれど、ブレないところはブレない。デビュー当時と変わらず、そこは貫き通していきたいです」と輝くような笑顔を見せた。過去の自分を乗り越えて、未来を真っ直ぐに見つめる水崎綾女。彼女の夢の行く先を、これからもずっと見守っていきたい。【取材・文/成田おり枝】