全米で議論!?『ゼロ・ダーク・サーティ』の噂の拷問シーンに迫る!
オスカー監督キャスリン・ビグロー×第85回アカデミー主演女優賞有力候補ジェシカ・チャステインで、ビンラディン追跡劇の裏側を描き出す『ゼロ・ダーク・サーティ』が2月15日(金)より公開される。
既に全米で公開され、第85回アカデミー賞で5部門ノミネートの本作は、CIAのビンラディン追跡チームの中心人物が若き女性分析官だったという衝撃の事実と共に、最先端技術による情報収集、過激な拷問、頭脳で闘うスパイ活動、法外な賄賂、そしてシールズ隊員による作戦、という今までに明かされていなかった追跡に至るまでの経緯を赤裸々に描き出している。
しかし、その一方で本作の制作に全面協力したCIAによる国家機密漏洩を問題視し、政治家たちが調査依頼をかける異例の騒動が起こっている。特に、その対象となっているのが拷問シーンだ。物語冒頭は、主人公であるCIA女性分析官マヤがビンラディンの捜索を任命され、アルカイダの拘束者に行われている厳しい取り調べを目撃するシーンから始まる。その時に見せるマヤの複雑な反応は、まさに観客の感じる不安な気持ちを投影しているのだ。拷問の有効性について論争が起きているなかで、なぜ製作者はこのシーンを入れようと思ったのだろうか?本作の撮影監督を務めたグレイグ・フレイザーは、「見るのも辛かったし、二度と撮りたくないと思う。演技であっても精神的に負担がかかる。だが、こういった出来事は実際に起きたし、全てのシーンが同等に印象的なのは映画として素晴らしいことだと思う」と痛ましい気持ちになったが、同時に啓発的だと感じていた。
実際に、本作で肉体的にも精神的にも拷問を受ける男を演じたレダ・カテブは、脚本を読んだ際に動揺したことを認める。「脚本を読んだ時は少し怖かった。なぜなら、あまりにも強烈で、残忍なまでに実際の環境と状況を再現していた。でも、読み返してみたら、普段テレビで見るようなアラブ諸国の描き方とは明らかに違う、上手く書かれた脚本に感心した。この脚本は人間的な側面から物語を描いていて、私は全ての表現者はそうあるべきだと思っている」と語る。また、この拷問を行うCIAのビンラディン追跡チームリーダーを演じたジェイソン・クラークは、「この映画は観客に、本能的で、感情的に、知的で、現実的な体験を与えるから、尋問に関する見解は自分で決めてほしい」と、相手に意見を預けていることを示唆する。
出演者、スタッフが不快な思いをしながら撮影し、過酷な状況にあったことが伺われるが、脚本のマーク・ボールは「私はこういった状況の、道徳的な、そして心理的な複雑さを描こうとした。この映画の目的は、こういった問題に対する解決を提供したり、拷問の効き目に関する論争を始めることではない。実際に起きた出来事を明確に描いて、観客にリアルな物語を伝えることだ」と、拷問は物語の一部で必要不可欠である、ということを断言している。
さらに、キャスリン・ビグロー監督は「人間としては目をつぶりたくなるような光景だったが、映画監督としては出来事をありのままに伝える責任があると感じた」と、主人公マヤがビンラィデン追跡に使命感を抱くかのように、監督として論議を呼ぶことがわかっていながらも、拷問も入れずにはいられなかったことを語っている。
キャスリン・ビグローをはじめとする製作者たち本作『ゼロ・ダーク・サーティ』で伝えたかった、ありのままの真実を是非スクリーンで見つめてもらいたい。【Movie Walker】