夫婦役で初共演の宮崎あおい&向井理「同じ空気を共有することが心地良い」と相思相愛

インタビュー

夫婦役で初共演の宮崎あおい&向井理「同じ空気を共有することが心地良い」と相思相愛

夫婦とは愛という、形のないもので結ばれた運命共同体だ。2月2日(土)より公開中の『きいろいゾウ』で描かれるのは、出会ってすぐに結婚したツマとムコの物語。絵本のような美しい物語でありながら、リアルな夫婦の感情を映し出す感動作に仕上がった。夫婦役で初共演となった宮崎あおいと向井理を直撃し、お互いの印象、そして理想の夫婦像などを聞いた。

原作は西加奈子の同名ロングセラー小説。宮崎は、帯に「いつかツマ役を演じてみたい」というメッセージを寄せるほど、その原作にほれ込んでいたという。「お話をいただいた時には、特別な喜びみたいなものがありました。西さんの世界観が好きだったので、西さんの世界に入れるならどの役でも良かったくらい」と微笑む。

向井も以前から本書を好きな小説の一冊に挙げていた。向井は、完成した映画の感想について、「刺激が散りばめられていて、130分間、全然飽きないで見られたんですよね。途中からがらっと毛色が変わるので、映画を2本見たような感覚になる。新鮮でしたね」と話す。宮崎も「映画を2本見たっていうのは、なるほどなと思いました。ファンタジーな部分と、感情がぶつかり合う部分。そのバランスの良い映画にでき上がったんじゃないかな」とうなずいた。

同じ本に共鳴したふたり。息もぴったりで、劇中では夫婦の間に流れるナチュラルな空気を表現してみせた。宮崎は向井の印象を、こう語る。「写真や映像で見る向井君って、いつもちゃんとしている印象で。王子様みたいに、特別な人だと思われていると思うんですよ。でも、お会いしてみたら、ちゃんとはしているけど、ちゃんと普通の人だった(笑)。ムコさんとツマさんとしているからかもしれないけれど、同じ空気を共有することがすごく心地良かったです。お互いの距離のとり方が似ているんだと思う」。

向井は「そうだね、ちょうど良い距離感だったな」と振り返る。続けて宮崎を「不思議な人」と形容した。「変な絵を描いているんですよ(笑)。抽象画?でも、ツマさんはそういう感性で生きている人なので、『なるほど』と思いました。僕はツマさんを見て、影響を受ける役で、何かを能動的に発する役ではなかったので、やはり現場では宮崎さんを見ていましたね。何か描いたり、色々やっていたよね?そういうのが自然で、本当に良い空間でした。カメラが回っていない時も、回っている時も関係なく、常に同じテンションでいられました」。

宮崎も“良い空間”にどっぷりと浸かっていたようで、「編み物をしたり、絵を描いたり、寝たりしていました(笑)」と話す。「でも、絵が描ける時と描けない時があるんですよ。大河ドラマをやっていた時に、缶の中にペンを入れて、暗いところでずっと変な絵を描いていたんですけど(笑)。大河ドラマが終わったら描けなくなちゃって。また描き始めたんですけれど、やっぱり描くものは、役の気持ちとリンクするような気がします。えぐいものやハッピーなものなど、現場によって描くものは違ってくるかもしれないですね」。

どんな役でも、自らを重ね合わせ、血の通ったキャラクターにしてしまう。ツマ役は、その宮崎の確かな演技力を証明するような役だ。印象的なシーンがある。車の中で訳もわからずイライラとしたツマが、その怒りをムコにぶつける、ツマの心の揺らぎが表れるシーンだ。宮崎は「台本を読んだ時から、難しいし、重くなるシーンだなと思っていました」と話す。「ツマさんのなかでは、もちろん感情がつながっているんだけれど、傍から見たら、あまりにも唐突に怒ったり、泣き始めたりする。自分のなかでも辻褄が合わないので、なかなか本番でも泣くところまでたどり着けず。やっていくうちに、自分ができないこともはがゆいし、悲しくもなってきて。でも、その感じが、あの時のツマさんのモヤモヤとリンクしたのかなと思うんです。結果的に良かったと思えるシーンになりました。ツマさんは、天真爛漫で、ちょっと子供のようなところもあって、すごく強いけど、同時にすごく弱い女性」。

それを聞いていた向井も「ツマのようなキャラクターをやると、全編、子供っぽくなる危険があると思うんですけど、それが全然なくて。ちゃんとツマが大人の女性として存在していた。それが素敵だなと思うんです」と宮崎のツマにほれぼれとしたようだ。さらに車中のシーンを思い出し、「ああやって、わちゃわちゃするのも愛情表現の一つなんだろうなって思うんです。気を許した人にしか、ああいう姿を見せない。ムコとしては、『子供っぽい部分を自分には見せてくれる』という安心感があったかもしれないですね」。

最後に理想の夫婦像を尋ねると、宮崎は「一緒に何かを見て感動したり、色々なものを一緒に共有できると良いなと思います。もちろん大人ですし、人としての個性を尊重しながら、お料理をしたり、お出かけしたり、ふたりでいる時間を大事にできる関係が良いなと。ツマさんとムコさんは、お互いだけがいれば良いというふたり。危うくもあるけれど、やっぱりそこまで思えるのは、特別な関係なんじゃないかな」。向井は「そんなに理想ってないんですよね」と照れながら、「完璧な人間なんていないので、それを補っていく関係が良いと思いますね」と話してくれた。

笑顔も怒りも、悲しみも喜びも、ぶつけ合うのが夫婦。映画に登場する他の夫婦の姿も、「どんな時も一緒にいよう」という覚悟、そして思い出を積み重ねる幸せを感じさせてくれる。是非、劇場に大切な人を誘って、素敵な時間を共有してほしい。【取材・文/成田おり枝】

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