タランティーノ、ディカプリオ初の悪役は「元々60歳の設定だった」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
タランティーノ、ディカプリオ初の悪役は「元々60歳の設定だった」

映画ニュース

タランティーノ、ディカプリオ初の悪役は「元々60歳の設定だった」

クエンティン・タランティーノ監督が、『ジャンゴ 繋がれざる者』のキャンペーンで来日。第85回アカデミー賞では、第70回ゴールデングローブ賞に続き、助演男優賞と脚本賞の2部門に輝いた本作が、いよいよ3月1日(金)より公開となる。ミニ会見に出席したタランティーノからは、俳優休業宣言でファンを驚愕させたレオナルド・ディカプリオについての愛にあふれたコメントが飛び出した。

タランティーノがアカデミー賞の脚本賞を受賞したのは、『パルプ・フィクション』(94)以来2度目だが、本作も刺激的なバイオレンスと、個性派キャラクターたちの化学反応が痛快な人間ドラマに思わずうなってしまった。また、前監督作『イングロリアス・バスターズ』(09)に続き、本作でもクリストフ・ヴァルツを2度目の助演男優賞に導いたのだから、監督としての手腕も折り紙つきだ。

ハリウッドの俳優なら、誰もがタランティーノからのラブコールを待ち望んでいるのは言うまでもないが、レオナルド・ディカプリオもそのひとりだったようだ。タランティーノはディカプリオについて「実はお互いに大好きな友人で、僕の脚本が完成して出回ると、レオは必ず読んでくれているみたい。それで今回、『ジャンゴ』の脚本を読んだレオから、キャンディ役のことで会いたいという連絡をもらったんだ」と教えてくれた。

本作は、ジェイミー・フォックス演じる元奴隷のジャンゴが、妻を救い出すために賞金稼ぎとなり、過酷な戦いに挑むというマカロニウエスタンだ。ディカプリオが演じたのは、冷酷非道な大農園の領主キャンディ役だ。「実は元々脚本上のキャンディは、もう少し年齢設定が上の役だった。でもレオが、キャンディ役についてすごく面白いアイディアを聞かせてくれてね。そこから考えていき、キャンディ役は若い方がもっと面白くなるんじゃないかと思い始めた。もともと60歳くらいの悪の帝王みたいなイメージだったけど、そうじゃなくて、ルイ14世のような手に負えない若き暴君のような役柄にした方が良いんじゃないかと思ってね」。

初の本格的悪役に挑んだディカプリオについて彼は目を見開き、大絶賛する。「本当に素晴らしかった! キャンディ役を見事に演じきってくれた。もちろん、ディカプリオは世界でも有数の映画スターで、ひとりで映画を背負える風格の役者だが、同時に素晴らしい性格俳優でもある。今回はまるでレオ自身が見えなくなるくらい、役に埋没していたよ。特にハンマーを手にするところは、本当に恐ろしかった」。

また、特筆すべき点は、キャンディに仕える黒人スティーブン役をサミュエル・L・ジャクソンが怪演しているところだ。キャンディにひたすら媚びを売る黒人の老人の姿は、奴隷制という黒歴史を端的に物語っている。サミュエルは『パルプ・フィクション』、『ジャッキー・ブラウン』(97)に続きタランティーノ作品に出演したが、彼に対しては「演出するなんてとんでもない」と笑い飛ばす。

「サミュエルを演出するなんて、まるでシェイクスピアのDNAが脈々と流れている俳優に『ハムレット』の演出をするのと同じくらい難しいことだ。サミュエルには元々ものすごい演技力が備わっているのだから。クリストフも、1回目の脚本の読み合わせが終わった後、僕のところへ来て『サミュエルは本当にすごい! インスピレーションを受けたが脅威も感じた。あの人はモンスターのような役者だ』だと言っていた。もちろん、監督として演技の微調整はするけど、ただ僕が現場ですることといえば、一観客として彼の演技を楽しむことだけ。あとは彼に対して感謝し続けることだけかな」。

最後に、タランティーノは本作への思いをこう語った。「『ジャンゴ 繋がれざる者』は、自分にとっても特別な作品となった。西部劇で、奴隷制の歴史を包み隠さず描きたかったが、みなさんを楽しませる作品にも仕上がったと思う。壮大なスケールで描けたのですごく誇らしいし、商業的にリスクもあったけど、こうしてみなさんに受け入れられたことはとても嬉しい」。

最後に「僕は、いまだに自分の首根っこを差し出すくらいの覚悟で映画を作っているよ」と締めくくったタランティーノ。この“首根っこ”は、会見では直訳しづらい大事な男のシンボルを指していたのだが、そこもご愛嬌。ジャパン・プレミアでもミニ会見でも、終始ノリノリの笑顔でタランティーノ節を炸裂させ、ギャラリーをたっぷりと楽しませてくれた。映画はもちろん、タランティーノ自身の存在そのものが極上のエンターテインメントだと実感した。【取材・文/山崎伸子】

作品情報へ

関連作品