第85回アカデミー賞、全米視聴者100万人増の理由は?

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第85回アカデミー賞、全米視聴者100万人増の理由は?

大ヒット作『テッド』(公開中)の監督セス・マクファーレンをホストに招いて現地時間2月24日に行われた第85回アカデミー賞授賞式は、全米で2012年比約100万人増、約4030万人が視聴したことが明らかになった。

調査会社ニールセンが2月25日に公表したデータによるもので、「前年比で2%強の増加、広告主が重要視する18歳から49歳までの視聴者が前年比約11%増となったのは、2012年のビリー・クリスタルなどに比べて、若いセスをホストに招いたことが成功につながった」とロサンゼルス・タイムズ紙は報じている。

セスの人種差別、性差別、宗教差別などの過激なジョークへの評価はさておき、視聴率が上がったことは成功を収めたということになるのだが、各メディアが分析している視聴率アップの原因について検証してみた。

まずは、今年ほど、最後までレースの展開が見えなかった年はなかったことが挙げられる。例年であれば、514万ドルしか稼いでいない『愛、アムール』(3月9日公開)のような、一般人がタイトルさえ知らない作品が数多く作品賞に選ばれるが、今年は1億ドルまで後一歩の『ゼロ・ダーク・サーティ』(公開中)の9500万ドル、『リンカーン』(4月19日公開)の1億7800万ドルを筆頭に、『ジャンゴ 繋がれざる者』(3月1日公開)の1億5800万ドル、『レ・ミゼラブル』(公開中)の1億4800万ドル、『アルゴ』(12)の1億2900万ドル、そして『世界にひとつのプレイブック』(公開中)、『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(公開中)も1億ドル越えと、ノミネート9作品中7作品の興行成績がほぼ1億ドルを越えていることからわかるとおり、例年になく一般人が鑑賞した映画が選ばれている。そのことによって、例年であれば話題に入れない人たちの興味を引き出し、オーディエンスとして賞に参加することに成功したのだ。

また、どん底を味わったベン・アフレック監督やキャスリン・ビグロー監督が監督賞から漏れ、作品賞や監督賞、主演女優賞や助演男優賞などの行方が想像できなかったことで、視聴者の期待感を煽ることにも成功したと言えよう。特にベンが『アルゴ』で作品賞を獲るかどうかは、ベニファー事件(ベンとジェニファー・ロペスの交際から破局劇)ではベンを軽蔑していた人たちまでもが、彼を応援したり、その行方を気にしていたようだった。

そして、作品賞にはノミネートされなかったが、アデルがパフォーマンスを披露することが決まっていた『007 スカイフォール』(12)は3億ドルを稼ぎ出す大ヒット作になったことから、ボンド映画50周年のトリビュートを楽しみにしている人も多かったこと、『レ・ミゼラブル』ではキャストが勢ぞろいし、過去10年間のミュージカル映画をトリビュートしたことや、オープニングで若者に人気のチャニング・テイタムやジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ダニエル・ラドクリフらが歌って踊るパフォーマンスを披露したことも、ソーシャルメディアを通じてツイートされ、話題を呼んだようだ。

さらに、『ハンガー・ゲーム』(12)のジェニファー・ローレンスや『ハングオーバー』シリーズのブラッドリー・クーパーなど、これまでとはジャンルの違う作品の人気俳優がノミネートされたことも関係しているようで、同授賞式をオンエアした米ABCテレビによれば、インターネットやソーシャルメディアを利用する人が増え、1月のノミネート発表以降には、前年比28%増となる約1580万人が同賞公式サイトを訪れたという。

最後にファーストレディーのミシェル・オバマ夫人が、ホワイトハウスからスクリーンに登場し、作品賞を発表するというサプライズがあったが、一部メディアや政治家からは、「文化と政治の混同も甚だしい」と批判があったものの、概ね視聴者からは好意的に受け止められているようだ。しかし、こちらはオンエア時間を30分以上過ぎた最後の登場だったため、視聴率への影響がどれほどあったのかは定かではない。

理由は何であれ、結果的には成功となったわけだが、話題性と興行成績から考えた場合、100万人増という数字をどうとらえるのか?セスの来年の続投の行方も楽しみだ。【NY在住/JUNKO】

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