藤原竜也、大沢たかおとの対峙に手応え「これこそ映画の現場!」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
藤原竜也、大沢たかおとの対峙に手応え「これこそ映画の現場!」

インタビュー

藤原竜也、大沢たかおとの対峙に手応え「これこそ映画の現場!」

大沢たかお主演、三池崇史監督『藁の楯 わらのたて』(4月26日公開)で、藤原竜也が演じたのは、人間のクズ中のクズ!クズと言えば、彼の主演映画『カイジ』シリーズで、どん底生活を送る伊藤開司もそうののしられてはいたが、今回のクズは正真正銘のクズ。幼女を暴行殺害し、懸賞金10億円を懸けられた凶悪殺人犯で、日本全国民を敵に回すという役どころだ。藤原にインタビューし、本格的悪役の撮影秘話について聞いた。

人間のクズこと清丸国秀役にどうアプローチをしていったのか。「衣装合わせも繰り返しやって、三池監督とは何度も話す機会を設けてもらいました。それで色々考えていった結果、極力何もしないというところにたどり着いたのです。どういうことかというと、何も考えずに現場に入り、テストをやって、大沢さんたちとの距離感や現場の空気を見てやっていったということです」。

大沢たかお扮する警視庁警護課のSP銘苅一基(めかりかずき)たちは、報奨金10億円に人々が殺気立つなか、清丸を福岡県警から警視庁まで移送していく。初共演の大沢を、藤原はこうリスペクトする。「すごかったですね。現場での立ち居振る舞いや、現場を引っ張っていく姿勢は、見ていて学ぶものがたくさんありました。ぶれない方です。銘苅が職務を全うするように、座長として、大沢さんも自分の仕事を全うされていました」。

後半で、銘苅と清丸が対峙するシーンは、本作の見せ場の一つだ。「あのシーンの現場は特に素晴らしかったです。監督、スタッフを含め、決めどころというか、100人いたら100人が『よし、1カットでいこう』という気持ちになっていたので。これこそが映画の現場だなと。大沢さんは、その瞬間に正しいアタックの仕方、ああいう表現をあの瞬間で出せるというところがすごく頼もしくて。おこがましい言い方ですが、本当に僕もやり甲斐を感じました」。

紅一点のSP白岩篤子役の松嶋についてもこう賛辞する。「暑いなか、大変な撮影でしたが、松嶋さんは男性陣の中で一人だけ女性だったのに、涼しいお顔をされていて。変な話、簡易トイレ1個の現場だったんです。女優さんとして役への食らいつき方が見ていて格好良かったです」。

清丸という凶悪犯を、彼はどうとらえたのか?「僕としては清丸自体には何の興味もないというか、幼稚で何を考えているのかわからない。でも、そういう人って世の中にたくさんいると思います。悪い罪を犯して死刑が決まった人なんかもそう。この映画は、現代を映す鏡じゃないかと。そんな憎むべき存在を、自分の命を懸けてまで移送するSPの方たちは本当にすごいと思うんです」。

清丸役を演じて、精神的なストレスとかは感じなかったのかと尋ねると、彼は「全然なかったです」とさらっと答えた。「ロケをした名古屋はびっくりするくらい暑かったのですが、それも今となっては良い思い出ですね。現場は本当に楽しかったというしかないですから」。

現場では、三池監督から随所で動きに関してのアドバイスをもらったそうだ。「監督に言われたことは、SPの人たちをどう苛立たせるかが大事だと」。確かに清丸は、自分を警護するSPたちにもひどい暴言を吐き、彼らの心を揺さぶっていく。「監督はいつも遠くを見ています。清丸を見て、お客さんがどう考えるのか、その先まで見ているんです。それって、僕たちが考えた思考を瞬間的に遮断するようなところもありますが、そんななかで、お客さんはきっとこう思うからこうやろうという具体的な指示を出してくれました」。

三池監督と藤原は『SABU さぶ』(02)以来のタッグとなったが、改めて三池監督の魅力について聞いてみた。「嘘がないところです。三池さんは常に本心で僕たちと向き合ってくれる。一緒に心中しようってことじゃないけど、『何かあったら俺が出ていく』と、心の底から言ってくれる監督です。だから俳優たちは安心できるし、信用もできる。この人のために、この人の映画を良くしたいという気持ちになれるんです。今回は特に、監督は今まで見たことのない迫力のある撮り方をしてくれました。三池さんの新しい挑戦というところが見どころだと思います」。

三池監督を筆頭に、大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也と、志の高いキャストやスタッフが、日本映画の枠を超えようと挑んだ『藁の楯 わらのたて』。彼らの挑戦をしかと見届けてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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