木南晴夏、初主演映画のヒロインに共感「これは私だと思った」
『20世紀少年』や「勇者ヨシヒコ」シリーズで人気の木南晴夏が、『デスノート』シリーズの金子修介監督作『百年の時計』(5月25日公開)で長編映画初主演を飾った。個性的な役柄の印象が強い木南が、オール香川ロケのヒューマンストーリーで、等身大のヒロイン役を好演している。木南にインタビューし、満を持しての初主演作への思いを語ってもらった。
木南扮する美術館学芸員の神高涼香が、ミッキー・カーチス扮する年老いた芸術家・安藤行人との交流を経て、成長していく。まずは、初主演作に対する意気込みから聞いた。「主演ということは、現場に入るとあまり意識しませんでした。私は、ミッキーさんと一緒のシーンが多く、現場の空気作りなどは全てミッキーさんがやってくださったので。ミッキーさんはすごく素敵な方で、今回は常に引っ張っていただいていました」。
涼香役が木南に決定してから、金子監督と脚本家の港岳彦と3人で話し合い、役柄の微調整をしたそうだ。「涼香を私に寄せた感じの役柄にしてくださったので、自然と役になれました。というか、涼香は私なんじゃないかと。港さんと監督が、私の内面を見抜いて台本に反映してくれたので、すごく助かりました。これだけ考えずに演じられたのは珍しいです。長いセリフを言う時も気付けば長いシーンが終わっていたというか。すごくやりやすかったです」。
憧れのアーティスト安藤行人の回顧展を担当することになった涼香は、日々仕事に打ち込んでいく。でも、その一方で、恋人とはギクシャクしてしまい、「君は人を孤独にさせる」とまで言われてしまう。「あのセリフ、実は、私も以前に言われたことがあるんです(苦笑)。最初の段階の脚本では、涼香はああいうキャラクターではなくて、もう少し彼に甘えられる素直な女の子でした。でも、3人でお会いして話した後、今の涼香に変わっていて。おふたりに、何をどう見抜かれたんだろう?と、びっくりしました。恋愛の話なんて全くしていなかったので、ちょっと恥ずかしかったです」。
実際に、頑固な部分はすごく似ているという。「私も涼香のようなヤキモチ焼きだとは思いますが、可愛くヤキモチを焼くことができず、涼香と同じように睨みをきかせ、その場から逃げてしまうタイプ。また、信じていることでは、絶対に頭を下げないところも似ています(笑)。弱みを見せたいんだけど、見せられないんです。見せ方を知らないというか。だから、何とか自分で頑張ってやりたいと思う涼香には、共感することが多かったです」。
涼香と同じく、木南も常にいろんなことにひたむきだ。女優業はもちろん、ダンス、バレエ、日舞、新体操という特技を持ち、英語や韓国語を話せる。趣味では、パン好きが高じてパンシェルジュ3級を取り、さらに家庭菜園好きで、ジュニア・ファームマエストロでもある。本人は照れながら、「はまり性なんです。でも、長くは続かない」と恐縮するが、いろんな分野にアンテナを張り、突き詰めていく性質は、女優としての資質につながっている気がする。
最後に本作の見どころについて聞いた。「この映画は、ゆっくりスタートし、最後に電車を使ったインスタレーションという大きなイベントへ向かっていきます。そこで、行人さんの昔の恋愛や、涼香のお父さんとのわだかまりなどを思い返し、今後、どうやって進んでいくのかを考えていく。そんな未来に向かって進んでいく電車なんです。そして、誰かと一緒にこれからを過ごす時間を見据えていく。過去を見て、今があって、さらに未来を見つめていける映画です」。
役柄さながらに、未来を語る木南の表情は、実に生き生きとしている。既に女優としての個性は開花しているが、初主演作『百年の時計』を経て、さらに大輪の花を咲かせるべく、邁進していってほしい。【取材・文/山崎伸子】