ネコバスからポニョ、カリオストロまで!ジョン・ラセターが宮崎駿アニメの魅力を分析
『モンスターズ・ユニバーシティ』(公開中)のキャンペーンで来日したジョン・ラセターを直撃。現在、彼はウォルト・ディズニー・スタジオ、ピクサー・アニメーション・スタジオ、ディズニートゥーン・スタジオズ製作の映画の全てを監修するチーフクリエイティブオフィサー(CCO)だ。ラセターが、ラウンドインタビューで、リスペクトしてやまない宮崎駿監督の魅力について語った。
親日家として知られるラセターは、最初にこう挨拶した。「僕は日本の文化が大好き。日本は僕の大好きなフィルムメーカーがいる国だから。そう、宮崎駿さんのこと。彼は大親友だ。また、私にとっても、ピクサーやディズニーのアニメーターたちにとっても、インスピレーションの源であると言える」。来日中に宮崎駿監督最新作『風立ちぬ』(7月20日公開)も鑑賞予定だという。
宮崎監督の話になると、目を輝かせ、饒舌になるジョン・ラセター監督。「宮崎監督作にはハートがあり、エモーショナルで感情移入しやすい。しかも美しい。全ての作品において、アイデアやイメージ、キャラクターなどが非常に独創的だ。たとえば、ネコバスとか、波の上を走るポニョもそうだが、今まで考えつきもしなかったものを見せてくれる。毎回発見があるから、僕たちも頑張って、もっとオリジナリティあふれるものを作らないといけないなと思うんだ」。
さらに、宮崎アニメのテンポについてもこう分析する。「今、ハリウッドの映画は、非常にテンポが速くなってきている。これは、MTVやミュージックビデオの影響を受けているせいだと思うが、カット割りがスピーディで、全てのペースが速い。でも、宮崎作品は、静かな時間を祝福しているような場面がある。そういうシーンがあるからこそ、スピードアップした時のアクションが活きる。コントラストが出て、よりスリル感が味わえるんだ」。
ラセターは、静と動のコントラストについて「ちょっとオタクっぽく、宮崎作品について語ります」と、『カリオストロの城』(79)の最初の方のシーンを例にあげた。「ルパンたちが黄色い車で走っていると、タイヤがパンクする。じゃんけんで誰がタイヤを交換するかを決め、負けた人(次元大介)が交換している間、もう1人(ルパン三世)はゆっくりと空を見上げ、雲の動きを観察する。そして『平和だねえ』と言う。でも、その後、急に車が走ってきて、そこからは最高のカーチェイスが展開する。そのコントラストが最高だ。キャラクター作りをはじめ、そういうことを宮崎さんから学んだよ。もう、この話を始めると止まらないね(苦笑)」。
実際に、ラセターも作品作りにおいて、緩急のメリハリを大事にしていると話す。「お偉方は『もっとテンポを速くしないと、みんながポップコーンを買いに行っちゃうよ』と我々に言うわけ。でも、僕たちは宮崎アニメをよく見ていたので、『いや、そうじゃない。静かに流れる時間も大事にしないと駄目だ』と言うんだ。だから、そうやって作ったピクサーの作品は、すごく感情移入ができる作品になっていると思う」。
ラセターは、『モンスターズ・ユニバーシティ』は、日本の観客にどう見られるかということをとても意識したという。「『モンスターズ・インク』(01)のサリーとマイクは、日本でものすごく愛されるキャラクターとなった。だから、映画の第2弾をどういう作品にしようかとすごく考えて作った作品だ。また、日本ではクリスマスの時期に公開する『プレーンズ』(12月21日公開)もお勧めだよ。『カーズ』シリーズと同じ世界観だけど、今回は主人公が車ではなく飛行機だ。そしてもう1本、『アナと雪の女王』は2014年3月公開なので、そちらもよろしく!」。
敬愛する宮崎駿監督についてたっぷりと話しながらも、しっかりとディズニー ピクサー作品をアピールしたジョン・ラセター。『モンスターズ・ユニバーシティ』は7月6日に公開され、2013年公開作品のオープニング週末興行成績で断突No.1を記録、大ヒット中だ。本作と、宮崎アニメ『風立ちぬ』という話題のアニメ2作品で、夏休み映画としてどちらに軍配が上がるのか、今から気になるところだ。【取材・文/山崎伸子】