宮崎監督の『風立ちぬ』、ヴェネチア映画祭で称賛の嵐
第70回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品し、イタリア現地時間9月1日(日)13時に始まった公式記者会見で宮崎駿監督の引退が発表された映画『風立ちぬ』。記者会見に引き続き、同日現地19時15分からレッドカーペット登壇と公式上映が行われ、スタジオジブリの星野康二社長(57)、本作のヒロイン菜穂子の声を演じた瀧本美織(21)が出席した。
公式上映では、冒頭スタジオジブリのロゴマークが出た瞬間大きな拍手が沸き起こり、観客からは時折笑いも起こるなど映画を楽しんでいる様子や、クライマックスでは涙ぐむ姿も伺え、本編が終わりエンディングに主題歌「ひこうき雲」が流れると、場内では約5分にも及ぶ嵐のようなスタンディングオベーションが起こった。
瀧本自身も公式イベント直前に聞かされたという宮崎監督の引退とヴェネチアでの上映という想いで感極まって、大粒の涙を流しながら暖かい拍手に応えていた。
上映終了後、瀧本は、「今まで、家族や友達と何度も『風立ちぬ』を日本で見てきたのですが、試写のとき以来です、こんなに泣いてしまったのは。(改めてこの地で映画を観て)噛み締めることができました。改めてすごいことだなと思って、感謝の気持ちを伝えたいです。(宮崎さんの引退を聞いて)『風立ちぬ』を作ってくださったこと、携わらさせてくださったことに本当に感謝しています。監督は、声優、女優としてどうあるべきかということの前に、人として大切なことを教えてくださいました。賞が獲れたときには改めて監督を始めスタッフのみなさんに大きな拍手を送りたいです」とコメント。
また、公式上映を観た観客からは「本当に感動しました。 すごく綺麗な映像でエモーショナル。監督のメッセージが良く伝わりました。大好きな監督だったので引退はとても残念です」「テンポも良く、よく演出された映画だと思いました。(監督の引退を聞いて)多くの良い作品を作って来たのに、とても惜しい事だと思います」など、作品への感動とともに宮崎監督の引退を惜しむ声が続々と寄せられた。
さらに、現地翌朝のマスコミでは、前日の突然の宮崎駿監督の引退発表を受けて『風立ちぬ』が大きく取り上げられ、「ヴェネチアに夢を見せてくれる平和主義なおとぎ話。創造性、夢、愛への讃歌歌った作品だ。映画の中で『才能は10年だ』という言葉があるが、彼の場合は例外であろう」(CORRIERE DELLA SERA紙)、「エモーショナルで感動的」「過去を見ながら現在と未来に挑む作品。彼の挑戦が勝利を収めたことは、日本の興行収入やヴェネチアでの拍手をみても明らかである」(La repubblica紙)、「マエストロ宮崎駿の最後の傑作。初めて泣いたという監督の言葉があるが、彼と一緒に私たちも泣いた」(Il Gionrnale紙)と称賛。
各誌の“星取り”でも現時点でのコンペティション部門上映作品に比べて軒並み高評価を獲得しており、アニメーションとしては史上初となる金獅子賞への期待が高まる。【Movie Walker】