早くもオスカーの呼び声高い『ザ・バトラー(原題)』、オバマ大統領は感涙!故レーガン大統領の息子は非難

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早くもオスカーの呼び声高い『ザ・バトラー(原題)』、オバマ大統領は感涙!故レーガン大統領の息子は非難

黒人差別が横行していた1960年代にミシシッピーに住む白人女性とふたりの黒人メイドの関係を描いた『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(11)が大ヒットし、アカデミー賞の作品賞など各賞にノミネートされて世間を驚かせたのは記憶に新しいが、今年もまた同じ流れが起こっている。

早くも、アカデミー賞候補の呼び声が高いのは、ハル・ベリーが黒人(アフリカ系アメリカ人)女性として初めてアカデミー賞主演女優賞を手にした『チョコレート』(01)、アカデミー賞ノミネート作品『プレシャス』(09)、『ペーパーボーイ 真夏の引力』(12)などを手掛けたリー・ダニエルズ監督がメガホンをとり、8月16日から全米公開されている『ザ・バトラー(原題)』だ。

ホテルの給仕係からホワイトハウスの執事長に上り詰め、1952年から1986年の34年間に、8人の米大統領に仕えていた黒人、故ユージン・アレンの人生を描いた同作は、製作費わずか3000万ドルながら、公開2週連続で首位の座を死守し、既に5600万ドルを稼ぎ出している。

ユージンに扮するのは、『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)で第79回アカデミー賞主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィテカーで、妻役には、マドンナに長者番付の1位を譲った有名司会者のオプラ・ウィンフリーが扮している。

自らも黒人であるリー・ダニエルズ監督は、ニューヨーク映画祭に出展された『プレシャス』、『ペーパーボーイ 真夏の引力』で記者会見に応じた際に、「幼いころから、常に人種差別を感じて生きてきた」と語っており、本作でも、それぞれアレンにかかわる8人の大統領の人種差別観が軸に描かれている。

同作を鑑賞したオバマ米大統領はラジオ番組のインタビューで、「ホワイトハウスで働く執事たちのことだけではなく、才能や実力がありながら人種差別のため憂き目にあいながらも、尊厳と不屈の精神で闘い続けてきたすべてのジェネレーションの人々のことを思い、涙が出た」と語り、『ザ・エージェント』(96)で第69回アカデミー賞助演男優賞を受賞したキューバ・グッディング・Jrやフォレストの演技を絶賛するとともに、女優ではないオプラの演技を大絶賛している。

一方で、劇中ではアラン・リックマンが扮した故ロナルド・レーガン米大統領(任期1981年から1989年)の息子は、父親が人種差別主義者として描かれていることについて、異議を唱えている。

「ハリウッドはまたやってくれましたね。実在の人物や歴史を、たくさんの事実を歪曲して描いている。脚本家のダニー・ストロングは、私の父の伝記をきちんと読んで脚本を書いたのだろうか。父が大学時代にやっていたフットボールのメンバーのうち、親友の一人は黒人だった。彼らがまだ、黒人だという理由で地元のホテルの泊まれなかった時代に、僕の父親は彼らを家に招いて家に泊めたこと、そして父がカリフォルニア州知事時代に、彼が真っ先に、黒人に重要なポジションを与えるように指示したことも勉強したのだろうか。父も母ナンシーもアレンをリスペクトしていたし、そもそも彼をホテル勤務に推薦したのも父だ。私の父が人種差別主義者などというのは、地球上で彼(脚本家)一人だけだ」と強い口調でnewsmax.comに語っている。

既に、社会を巻き込んだ話題性十分な作品になっているが、白人至上主義と言われるアカデミー会員が、今年は同作にどのような判決を示すのか、今から来年のアカデミー賞が待ち遠しい。【NY在住/JUNKO】

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