真田広之「これからやっと、スタート」、日本人らしさを曲げずに突き進む“醍醐味”とは

インタビュー

真田広之「これからやっと、スタート」、日本人らしさを曲げずに突き進む“醍醐味”とは

日本が誇る国際派スター、真田広之。ヒュー・ジャックマン演じる「X-MEN」シリーズの人気キャラクター、ウルヴァリンを描くシリーズ第2弾『ウルヴァリン:SAMURAI』(9月13日公開)では、ウルヴァリンと対決するシンゲン役に抜擢。気迫たっぷりに、カギ爪と日本刀による、火花散る激闘を見せてくれる。「アクションなのに、ダンスシーンを撮っているかのようなグルーヴを感じた」と真田。ヒューとの共演から得た刺激、そして、世界をフィールドにする醍醐味をたっぷりと語ってもらった。

真田は「オファーの前に、日本を舞台にしたシリーズができると聞きつけて、ロスでアメコミを読み漁ったんです。すると、現代劇なのにニンジャが出てくるんですよね(笑)。『ええ!?』と思って」と戸惑いを告白。「実際にオファーをいただいたら、脚本の時点でアレンジもされていて。ジェームズ・マンゴールド監督に会うと、『日本映画から受けた刺激や、日本へのリスペクトをミックスして、オリジナルの日本を描きたい』というんです。彼ならば、意見交換もできるし、大丈夫だなと思いました」と監督との出会いが、不安を払拭してくれたという。

もう一つ、本作への出演を決意させたのは、ヒュー・ジャックマンの存在だ。「ヒューと初めて会ったのは、8年くらい前。上海の映画祭でした。僕が『ラッシュアワー3』(07)を撮っている時にも、隣のスタジオで撮影していたヒューが遊びに来てくれて。いつも『いつか一緒にやりたいね』という話をしていたんです」というように、念願の共演が叶った形だ。実際に共演した感想を聞くと、「現場でカメラを前にして対峙すると、一番、相手のことがわかる気がするんです。10年の飲み友達より、1カットを一緒にやるとわかり合えてしまうというかね」と微笑んだ。

ヒューと対峙して気付いたのは、「彼の積み重ねてきたキャリアと、ここ数年の快進撃の由縁」だという。「今回は特に、ヒューは『レ・ミゼラブル』(12)を撮り終えた後でしたし、キャパシティや自信、持っているオーラがどんどん大きくなっているのを感じた。朝は誰よりも早く来て、筋トレをしているし、スタッフ・キャストへの気遣いもさすが。穏やかな笑顔でサラッとみんなを引っ張っていってくれるんです。その辺りも、今のポジションを築いた大きな要因なんでしょうね」。

国境を越え、世界中の映画人との仕事を心から楽しんでいる様子の真田。世界へと視野を広げたのは、1999年、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台「リア王」への出演がきっかけだった。「初めて、全編英語で挑んだ舞台。しかも、イギリス人を相手にシェイクスピアをやるなんて、とんでもなく、大それたことをやることになり(笑)。もがきながら、駆け抜けたんです。そうした時に、お互いの文化を学び合いながら、誰も見たことのない、新しいものを作り出すというプロジェクトに、難しさと同時に、楽しさも感じて」。

さらに情熱的に、こう続ける。「『ラストサムライ』(03)でポストプロダクションに関わって、日本の描写としておかしい部分を修正する作業に参加した時も、洋の東西の壁は崩せるなと思った。この壁を崩して、橋をかけて、行き来できるようにする。カルチャーをミックスして、新しい時代を作る。これは自分のライフワークになるんじゃないかと思って。そこへ感じる醍醐味や、面白さが膨らんでしまったんですね。もうこれは、日本から外を垣間見るのではなくて、外の世界に飛び込んでみないと確信は得られないなと。“虎穴に入らずんば虎子を得ず”といった気持ちで、出稽古も兼ねて、飛び込んだんです」。

「最近、ようやく初心者マークがとれたかな。やっと、これからスタートという感じ」と笑う。「ハリウッドでも、ゲストとして甘えることはもう、できない。実績が評価されればされるほど、ハードルは高くなりますから。それに逃げずに、ちゃんと向き合う時期が来たのかなと思っています。どんどんきつくはなりますね。でも、進歩するためには、少しでも高いハードルと向き合わないと、出稽古の意味がないですから」。熱く、真っ直ぐな人柄に、“国際派”と呼ばれるオーラがじわりとあふれ出す。

「新しい時代を作る」。その上で大事にしているのは、「日本人らしさを曲げないこと」だという。是非、『ウルヴァリン:SAMURAI』で、真田広之の情熱に触れてほしい。【取材・文/成田おり枝】

作品情報へ

関連作品