『甘い鞭』壇蜜の少女時代を体当たりで演じた間宮夕貴「壇蜜さんに負けるもんか」
ふたりの女優が、ひとりの悲しい性を抱えた女性を演じた。『甘い鞭』(9月21日公開)は、奈緒子という女性の“昼と夜”、“過去と現在”が交錯し、侵食する様を過激に描く官能映画だ。32歳の奈緒子役にはエロスの女王・壇蜜。そして、その少女時代に扮したのが、本作が本格的演技初挑戦となる間宮夕貴だ。そこで、人気絶頂の壇蜜と同じ役柄を演じた心境、共演で得た刺激に迫った。
高校生の時に拉致監禁され弄ばれたという壮絶な経験を持ち、女医であり、SMクラブのM嬢というふたつの顔を持つヒロインの生き様が描かれる本作。間宮は、初めてのヘアヌードも辞さず、壮絶な陵辱シーンに挑んだ。「石井(隆)監督の世界に入りたいと思った」と監督への信頼を口にするが、もう一つ、大きく彼女の背中を押したものは、やはり、壇蜜の存在だ。
「私、負けず嫌いなんです」と彼女。「監督に、『昨日、壇くんはこういうことをやっていたよ』とか言われると、悔しくて(笑)。実際、壇さんの緊縛のシーンの迫力はすごかったですから!『負けるもんか』という気持ちもありましたね。それに、奈緒子のトラウマである私の部分が、『壇さんのSMシーンの方がすごい』と言われてしまったら、映画としても面白くなくなってしまうし、この映画が伝えたいこともわからなくなってしまうと思ったんです」と、女優としての心意気が顔をのぞかせる。
壇蜜の印象を聞くと「知識が豊富で、優しいお姉さん。壇さんが私を引っ張ってくれました」とのこと。「私は、壇さんのSMのシーンの後に、監禁されるシーンを撮ったんです。すると、私の撮影の前日に壇さんが、ホットアイマスクとか顔パックなど、ケアグッズを現場に置いてくださっていて。『間宮ちゃん、頑張ってね』という手紙が添えられていて、うるっときてしまいました」と、壇蜜の気遣いに感動したという。
壇蜜の仕事の向かい方にも、たくさんの刺激を受けたようで、「撮影が始まる前は、ひとりで静かに集中しているんです。それが撮影が始まると、ウワッとスイッチが入る。壇さんが、縛られて吊るされるシーンがあるんですが、すごい長回しで撮っていて。なかなか監督のカットがかからず、たぶん、30分くらいは撮りっぱなしだったと思うのですが、そんなに長い間、集中力が途切れないのは、本当にすごいと思いました」。
グラビアから、女優へ。壇蜜と間宮は、同じ道のりを歩み始めた。「ちょうど映画を撮っている間に、壇さんが急激に有名になっていった。私も壇さんに追いつけるかな」と、壇蜜を見上げる。自身の成長のキーワードとなるものを尋ねると、「痛めつけられたり、追い込まれたりすること」だという。「中学生の頃、吹奏楽部だったんですが、すごい厳しい部活で、スパルタだったんです。その時の記憶がよみがえるんでしょうか(笑)。追い込まれた時が一番、自分が成長できる気がします」。
さらに、学生時代について、こう明かしてくれた。「私、自分の低い声にすごいコンプレックスがあって、人前でしゃべるのもすごく嫌だったんです。とにかく人前に出るのが苦手で、今の私を見たら、昔の私が腰を抜かすほどビックリすると思う!本当に不思議なんですが、大人になるにつれて、もっと前に出て、人前で話をしたり、色々なことをやってみたいと思ったんです。はじめは不安でしたが、やってみると楽しくて」。
楽しさの一番の源は、「みんなの反応」だという。「私が何かをやったことで、みんなが笑ったり、反応をしてくれたりするのを見て、すごく嬉しいと思ったんです。この映画に出て、また、グラビアとは違う快感を得ました。監督をはじめ、ものすごくたくさんの人と、この映画を作っていると思うと、それなりの覚悟を感じて。この人たちが満足するもの、満足以上のものを出さないといけないと思いました」。22歳の可憐な笑顔、このしなやかな体のどこに?と思うほどの芯の強さを持っている。
「たくさんの言葉をもらって、たくさんの刺激を受けました。一日、一日、学ぶことばかりだった」と間宮夕貴。女優として開眼した彼女の、夢の行く先をこれからも見守っていきたい。【取材・文/成田おり枝】