天才マジシャンを演じたJ・アイゼンバーグ「もし気に入らなかったら、もう数回観てみて(笑)」
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた『ソーシャル・ネットワーク』(10)をはじめ、数々の作品で独自の個性を放ち続ける俳優、ジェシー・アイゼンバーグ。そんな彼が“世界一のマジシャン”に扮した最新主演作『グランド・イリュージョン』(10月25日公開)は、天才マジシャンたちが華麗な犯罪を繰り広げるエンタテインメントだ。来日したジェシーが本作の魅力と、撮影秘話を語ってくれた。
ラスベガスのショー会場に居ながらパリにある銀行の金庫から大金を盗むという不可能な犯罪を成功させ、観客の度肝を抜く天才マジシャン集団“フォー・ホースメン”。ジェシーは自身が演じた “フォー・ホースメン”のリーダー、アトラスについて「彼は世界一のマジシャンだということを自分でちゃんと分かっていて、なおかつ自信満々。性格的には違うと思うけれど、リーダーシップをとりたがる彼の気持ちは、わかる部分もある」と解説する。
俳優としてではなく、ジェシーの脚本家としての側面がアトラスというキャラクターに反応したのかもしれない。「自分が1年間かけて書いたものが製作に至るまでは数年かかることもあるんだ。だから、それまでこの企画がうまくいくようにコントロールしたいと思ったりもする。一生懸命作った自分のかわいい“子ども”だから、誰にもいじってもらいたくないっていう気持ちになるものなんだ」。
観客のためにパフォーマンスをするという点では似ている俳優とマジシャン。俳優としてマジシャンを演じるという複雑な構造を、ジェシーはどう感じたのだろうか。「1つ、決定的な違いがあると思う。マジシャンは『今やっていることは本物ですよ』と言いながら嘘をついているんだ。トリックだからね。それに対して俳優は、観客と暗黙の了解があって、『これは本物ではないですよ、フィクションですよ』ということをわかってもらった上でやっている。だからマジシャンの方が、観客を騙すことに対する罪悪感がないのかもしれないね」。
劇中で天才マジシャンたちが披露するマジックも本作の見どころ。ジェシーは「ユニークな体験だった」と撮影を振り返る。「プロのマジシャンにトレーナーとして付いてもらったんだ。彼に何から何まで教えてもらったおかげで、撮影が始まるころにはプロらしく見えるくらいのレベルにはなれたと思う。ただ、練習のため現場の人たちにマジックを見せていたら、最初は楽しんでくれていたけれど途中で飽きてきて嫌になっちゃったみたい(笑)」。
“フォー・ホースメン”のメンバーの1人を演じたウディ・ハレルソンとは『ゾンビランド』(09)以来の共演だ。「彼とはすでに阿吽の呼吸が出来上がっていたからすごく楽しかったよ。今回はアドリブシーンも多かったから、お互いにいろんなアイデアを絞り出しては現場に持ち込んで、『オレの方が賢いんだぞ!』という具合に競い合ってたんだ(笑)。でも彼は当日までにきちんと準備をして万全の状態で撮影に臨む人で、仕事への真剣な姿勢に改めて感心したよ」。
マジシャンたちと彼らを追うFBIとの攻防をスリリングに描いた本作を、ジェシーはインタラクティブ(対話的)な作品だと表現する。「いろんなマジックを見せながら、タネもちゃんと明かしてくれて、その上黒幕は誰だ?という謎解きもある。一方通行ではなく、観客が映画と対話するような、そんなゲーム感覚で観ることができるんだ。きっと気に入ってくれると思うから、日本の皆さんはぜひ観に来てね!もし気に入らなかったら、もう数回観てみて(笑)」。【取材・文/トライワークス】