第86回アカデミー賞ノミネート予測第1弾<助演男優賞編>
2014年1月16日に行われる第86回アカデミー賞ノミネート発表を前に、indiewire.com、goldderby.comなど業界関係者の分析による、カテゴリー別に業界予測をまとめてみた。
現在のところ、助演男優賞候補の中で断トツの強さを見せているのが、作品賞と同様に『12 Years a Slave』のマイケル・ファスベンダーだ。スティーヴ・マックイーン監督の長編デビューとなった『Hunger』(08・日本未公開)と2作目でタッグを組んだ『SHAME シェイム』(11)で頭角を現し、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(11)や『プロメテウス』(12)に出演するなど一躍スターダムにのし上がったファスベンダーは、『SHAME シェイム』ではゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、立派なイチモツをジョージ・クルーニーにベタ褒めされていたが、役どころがアカデミー会員に好かれなかったのか、アカデミー賞にはノミネートもされず、辛酸をなめた一人と言われている。今回の役どころも無慈悲な農場主と、決して愛すべき人物とは言えないが、内なる感情を見事に表現したファスベンダーの演技は高く評価されており、マックイーン監督とともに、“3度目の正直”の実現に早くも注目が集まっている。
マイケルとともに高評価を得てるのは、『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャレッド・レト。同作でニューハーフのエイズ患者を演じているジャレッドは、主演のマシュー・マコノヒーに負けず劣らず、30ポンド(13.5キロ)の減量と眉毛を剃って同作に挑み、化粧と女装で圧巻の演技を見せており、現在のところふたりの名が最有力候補として挙がっている。
『ウォルト・ディズニーの約束』のトム・ハンクスも最有力候補の一人だが、『キャプテン・フィリップス』での主演男優賞ノミネートが確実視されており、票割れが気になるところだ。
後を追うのは、デビュー作となる『キャプテン・フィリップス』でトム・ハンクス相手に、ソマリア海賊のキャプテン、ムーセを堂々と演じたバーカッド・アブディや、『ラッシュ プライドと友情』でニキ・ラウダを演じたスペイン生まれのドイツ人俳優ダニエル・ブリュール。ほか、『大統領の執事の涙』でフォレスト・ウィテカー扮する執事の息子を演じたデヴィッド・オイェロウォ、人気テレビシリーズ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」で知られ今年6月にイタリアで急死した故ジェームズ・ガンドルフィーニ(『Enough Said』)、あまりセリフはないもののコーエン兄弟で5度目のタッグとなる『Inside Llewyn Davis』のジョン・グッドマン、昨年主演男優賞にノミネートされた『世界にひとつのプレイブック』(12)に引き続き、『アメリカン・ハッスル』でデヴィッド・O・ラッセル監督とタッグを組んだブラッドリー・クーパーなどの名が挙がっている。
マーティン・スコセッシ監督作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では、ジョナ・ヒル、ジェレミー・レナー、マシュー・マコノヒーと、3人の助演男優の演技もなかなかの評価を得ているが、票割れもあってノミネートは難しいとされている。またマシューは『MUD マッド』でも高評価を得ているが、主演男優賞のノミネートが確実視されている『ダラス・バイヤーズクラブ』に票を集中させたいところだろう。
その他には、スパイク・ジョーンズ監督作『アダプテーション』(02)でアカデミー賞主演男優賞を受賞しているクリス・クーパー(『August: Osage County』)、オスカー無冠で『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)以来ノミネートすらされていないハリソン・フォード(『42 世界を変えた男』)など、ベテラン俳優の久々の参戦も期待されている。
5席を争う助演男優賞のノミネートは、他のカテゴリーと比較すると、例年比較的早く候補者が絞られる傾向にあるが、現時点では激戦が続いており、今後の行方から目が離せない【NY在住/JUNKO】