『大統領の執事の涙』監督がもらった“アカデミー賞より大きな賞”とは?

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『大統領の執事の涙』監督がもらった“アカデミー賞より大きな賞”とは?

フォレスト・ウィテカー主演のヒューマンドラマ『大統領の執事の涙』(2月15日公開)の来日記念舞台挨拶が2月6日にスペースFS汐留で開催され、初来日を果たしたリー・ダニエルズ監督が登壇。「日本に来られて嬉しい!」と日本語で喜びを語った。

『プレシャス』(09)でアカデミー賞に輝いたダニエルズ監督の最新作は、ホワイトハウスで7人の大統領に仕えた黒人執事と、その時代に翻弄される家族を描く物語だ。ダニエルズ監督は「本作の主人公は実在の人物。キング牧師の暗殺から、オバマ大統領の当選までを見通せるキャラクターなんだ」と解説。「黒人たちが公民権運動に入り込んでいくなか、父と息子がどのように生きたのかを描いている。アメリカの歴史でもあり、父と息子のラブストーリーでもあるよ」と映画にこめた思いを教えてくれた。

第86回アカデミー賞への呼び声も高かったが、惜しくもノミネートを逃してしまった本作。ダニエルズ監督は「もちろん、悲しいとは思っている」と胸の内を告白。続けて「でも実は、従兄弟から一番大きな賞をすでにもらっているんだ」といい、「92歳の僕の従兄弟は、初のアフリカ系アメリカ人小児外科医。当時アメリカでは医学を学べず、ドイツに渡り医学を学んだ。彼がこの映画を見た時に、僕を抱きしめて、『これは僕らの物語だ。この映画を作ってくれて、本当に誇らしい』と言ってくれた」とコメント。「これが僕にとって必要な唯一の賞でした」と語りかけると、会場からも大きな拍手が沸き起こっていた。

またこの日は、特別ゲストとして執事姿に扮した石田純一が登場。ダニエルズ監督を“おもてなし”すべく、監督に浴衣のプレゼントが渡された。浴衣が日本の“パジャマ”であることを聞かされると、ダニエルズ監督は「パジャマ!?」と大興奮。「実は僕、映画を撮る時はパジャマ姿なんだよ!すごく嬉しい!」と意外な撮影スタイルを明かし、「今度はこの浴衣を着て、石田さんを演出しようかな!」と思わぬ贈り物に大喜びだった。

石田も「本当に良い映画で、とても感銘を受けた」と熱っぽく語り、「子どもが親を拒絶したり、親を越えていく描写も胸に迫る」と父親としても刺激を受けた様子。するとダニエルズ監督は「自分の父親は13歳の時に亡くなったんだ」と思い出を語り、「父はいつも怒っていてね。でも本作を撮り終えた時に、父を許すことができた。マイノリティであることが、いかに重くのしかかっていたかがわかったんだ」と真摯な眼差し。会場からも、ダニエルズ監督の人柄、強い思いに惜しみない拍手が贈られていた。【取材・文/成田おり枝】

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