『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』の伊藤淳史、仲村トオルにかけられた感謝の言葉で涙!
心療内科医の田口公平と、厚生労働省の役人・白鳥圭輔の凸凹コンビが、病院を舞台にしたミステリアスな事件の謎に挑む「チーム・バチスタ」シリーズ。2008年にスタートした、海堂尊原作の医療ドラマが、いよいよ『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』(3月29日公開)として、スクリーンで完結する。本シリーズを二人三脚でやってきた伊藤淳史と仲村トオルにインタビューし、映画版の撮影秘話から、同シリーズへの万感の思いまでを語ってもらった。
今回、田口(伊藤淳史)と白鳥(仲村トオル)の前に立ちはだかるのは、最新鋭の死因究明システムを巡って起きる、病院爆破の脅迫状の事件や集団不審死の謎だ。伊藤は「ドラマと映画をセットでやりますと聞いた時は、正直、驚きました」と話す。「今回ファイナルということで、それにふさわしい場所として、スクリーンを提供してくださったのかなと。映画ではドラマ『螺鈿迷宮』に登場しない田口の愚痴外来のシーンもあったので、『バチスタ』っぽいと思いました。また、オープニングで9人が不審死をする話もなかなかないし、バチスタ史上最大のミステリーということで、2時間の中にいかにいろんな要素を盛り込んで面白いものにするかという意気込みを感じました」。
仲村は、ドラマから映画化された作品に出演するのは「あぶない刑事」シリーズ以来だ。「TVシリーズで良いものを作り、それを見た人が映画館に来て、十分楽しめるものを作らないといけないというかなり大きな緊張感がありました。ただ、台本を最初に読んだ時は、的を絞るのが難しい話だなあと感じましたね。最初にグッチー(伊藤淳史)が戦車に乗って登場するシーンなどもあって、映画だとこんなに力が入るのかと(笑)」。伊藤も「確かに、あのシーンは映画っぽい」と笑った。
田口と白鳥の凸凹タッグがシリーズの肝となるが、回を重ねていくに連れ、互いの役柄への印象も変わっていったそうだ。伊藤は「最初は、人を人と思わないような白鳥の扱いが嫌でした。上から目線で、とにかくバカにされるウエートがすごく高かったから。でも、だんだん白鳥が田口先生を認めてくれるようになっていく。田口もだんだん免疫力がついてきて、白鳥さんの横にいること自体が嫌じゃなくなってきたんです。お互いに理解できる部分が増え、今回なんて、白鳥が田口のアパートまで来るようになる。男子の怪しい関係まではいかないけど(苦笑)、距離感がかなり近づいたなという気はしました」。
仲村も田口についてこう分析。「最初は使いっ走り以外の何ものでもない感覚だったけど、少しずつ変化していった。白鳥が強烈な北風を吹かせてもコートを脱がない旅人を、田口先生は太陽のように脱がせられると気づき始めるんです。今まで、田口先生がホームグラウンドの愚痴外来で活躍するシーンはそう長くなかったけど、多くの登場人物が、彼の心療内科医としての優秀さに助けられてきたように、白鳥も助けられてきた。そういう意味で、白鳥にとっても彼は最良の主治医になっていったとは思います」。
最後のクランクアップを迎えた日は、どんな思いだったのか。伊藤は「トオルさんのクランクアップ当日は、エキストラさんが何百人も集まった大講堂のシーンで、あまり終わる気がしなかったんです。でも、トオルさんに花束をお渡しし、コメントをされ始めた頃から少しずつやばくなっていって。最後に、トオルさんが『みなさんに感謝しています』と言った後『何よりも感謝しているのは、伊藤淳史です』と言ってくださって、もう一気に泣きまくりました。それから僕ひとりで新潟に行ってクランクアップしましたが、降る雪も僕の寂しさを盛り立て、最後の挨拶をした時も泣いてしまいました」。
仲村も「僕は最終日は、なんとしても撮り終わらないとという気持ちがまずは強かったです」と振り返る。「『螺鈿迷宮』を撮り始めた7月から12月までやってきて、とにかく完走しなきゃいけないというプレッシャーに近い緊張感がずっとありました。でも、終わった時は、感極まりましたね。若い頃は、他の方が挨拶で『すべてのスタッフやキャストのみなさんのおかげです』と言っているのを聞いて、立前かなと思っていた時代もありましたが、その瞬間は、本当に、エキストラの人も含めた全員に感謝し、現場にいなかったTVシリーズのスタッフの顔も次々に浮かびました。言葉にすると、気持ちが追いつかなくて嘘っぽくなってしまいますが、寂しいというよりは、こんなに素晴らしい人たちと、6年という長い時間、一緒に仕事ができたことへの感動が大きかったです」。
スケール、人間ドラマの深みと共に、シリーズの集大成的な映画となった『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』。田口公平と白鳥圭輔の絶妙なコンビの見納めとなる最終章を、じっくりと劇場で堪能してほしい。【取材・文/山崎伸子】