押井守総監督「良い答えが出た」と手応え。『パトレイバー』を実写化した理由とは?

インタビュー

押井守総監督「良い答えが出た」と手応え。『パトレイバー』を実写化した理由とは?

1988年以降、先駆的にメディアミックスを繰り広げ、多くのファンを獲得した伝説的アニメ『機動警察パトレイバー』。アニメシリーズの初期OVA、劇場版(1&2)でも監督を務めた鬼才・押井守が総監督として指揮をとり、遂に初の実写化が実現した。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』となって、巨大プロジェクトとして展開する本作(第1章が4月5日より限定上映開始)。押井監督が実写に挑む理由に迫るとともに、ヒロインに抜擢された真野恵里菜に、現場での押井監督の様子を聞いた。

押井監督はなぜ今、『機動警察パトレイバー』を実写化しようと思ったのか。最も気になる疑問をぶつけてみると、押井監督は「アニメでもう一度やってくれと言われても、なんだかんだ言って逃げただろうね」とニヤリと笑顔を見せた。

“レイバー”と呼ばれる作業用ロボットが普及した東京を舞台に、レイバー犯罪に立ち向かう警視庁特科車両二課中隊(特車二課)の活躍を描く本作。押井監督は「特車二課というのは、毎日が学園祭みたいな世界なんだよ。格好良いわけでも、良いもん食っているわけでもないけど、なんだか『こういうところに自分も行ってみたい』と思わせるような場所で。実物を山ほど作って、そのなかに役者さんに入ってもらうことで、その独特の楽しさやワクワク感を演出してみたかった」と打ち明ける。

「特車二課というのは、たいして若くない人も混ざっているけれど、基本的には若い人の世界。まあ、こうるさいジジイもいれば、わけのわからないジジイもいるんだけれど(笑)。若い人の世界のワクワク感というのをみんなが見たいだろうし、僕も見たいと思った。僕も歳をとったけれど、かつてそういう世界にいた記憶があるしね。アニメの現場というのは、そういうものなんだけれど。そういったワクワク感が演出できれば、これは相当楽しいことになると思ったんです」。

シリーズの誕生から約四半世紀。本作で綴られるのは、アニメのその後の物語であり、舞台は“現代”。主人公たちは特車二課の“三代目”だ。「今、作るんだったら、今を描くべきだと思った。あの当時を再現しても、仕方がない」と押井監督。やったもん勝ちの初代から受け継いで、すでにあるものから出発するしかないというのは、今の時代のテーマでもあると感じたそうだ。

押井監督にとってこれだけの思い入れのある作品で、ヒロインの明役に抜擢されたのが真野恵里菜だ。現場での押井監督の様子を聞くと、「明は太陽のような子でいてほしいと言われて。それはブレないよう、心がけていました。でも、細かいお芝居を演技指導されたというのはあまりないんですよ」と話す。

押井監督は「単純なことなんですけど、役者さんが自分の思いもしなかった芝居をしたり、良い表情をしたりするのが、嬉しいだけなんです」と笑う。「『ああ!そうか、そう来たか』というのが楽しみで。それはアニメをやっていると、永遠にありえないことだから。実写を撮っていると、自分が想像していたものが裏切られる時がある。そういうことが多ければ多いほど、作っていて面白いし、良いものが出来上がったりするわけで」と、押井監督にとって実写の醍醐味とは、“裏切られる瞬間”のようだ。

自由に、“明として生きること”を求められた真野。「最初は戸惑ったし、私が明で良いのかなと不安だった」と振り返る。そのなかで支えになったのは、現場の仲間と押井監督の笑顔だと言う。「『やっぱり、押井監督のOKの笑顔が見たいよね』とみんなで言っていたんです。すごく覚えているのが、バスケットボールをやるシーンがあるんですが、そのシーンが終わった後に押井監督が、頭の上で大きくマルを作ってくれたんです。その瞬間、すっごく幸せでした」。

人気の高いシリーズだけに、ファンにとっては実写化への不安があるのも事実だ。押井監督は最後にこう、メッセージを贈ってくれた。「ファンであればあるほど、不安だと思う。自分の好きなキャラクターがどうなってしまうのか、レイバーがどのように動くんだろうとかね。期待と不安がないまぜだと思うんです。それは、僕らも同じだった。でもある意味、良い答えが出たと思っているので、期待してもらいたいと思っています」。【取材・文/成田おり枝】

『THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章』
4月5日(土)より全国にて劇場上映開始
劇場上映期間中、上映館内にて劇場限定版ブルーレイの先行販売決定
4月26日(土)よりスターチャンネル(BS10ch)や各種動画配信サイトで放送・配信開始。一般販売ブルーレイ&DVDも販売開始

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