女子高生の集団妊娠騒動について、アクション女優・武田梨奈が語る!
アクション女優として人気を馳せる武田梨奈が、アメリカで実際に起こった女子高生の集団妊娠騒動をモチーフにした衝撃作『リュウグウノツカイ』(8月2日公開)に出演。かなりセンセーショナルな設定だが、完成した映画は、武田たち若手女優陣のまぶしい感性が光る青春映画の快作となっていた。武田梨奈にインタビューし、本作の撮影秘話と、今後の抱負について話を聞いた。
この集団妊娠騒動は、2008年にアメリカの漁村で起こった珍事だが、脚本も手掛けた新鋭・ウエダアツシ監督が、舞台を日本の寂れた漁村に置き換えてアレンジし、エッジの効いたハイパーな青春映画に仕上げた。2014年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門では、北海道知事賞を受賞している。武田は「設定から、もっとえぐい作品を想像していたけど、実際はもうちょっと甘酸っぱい感じに仕上がりました」と笑顔で話す。
うら若い少女たちが、集団で妊婦になるという画は実にインパクトがある。「あんなにお腹が大きい若い子たちが集まる画って見たことがないですからね。それは、遠目から見ても、すごく面白い光景だなと思いました(笑)。でも、それが本当にあった話だと思うと恐ろしいですね。でも、今の時代、あってもおかしくない話なのかなとも感じました」。
彼女が演じたのは、集団妊娠騒動を巻き起こすグループにいた幸枝役。「私も中学生の時は男まさりで落ち着きがなく、ふざけたりイタズラをしたりするのが大好きだったので、そういうところは幸枝と似ています。また、自分が悩んでいるところを人には見せたくないという点も同じでした」。
共演した寉岡萌希ら同世代の女優陣から、たくさん刺激を受けたという武田。「みんなそれぞれ、セリフの出し方や演じ方が違うので、見ていてすごく勉強になったし、面白かったです。撮影期間は1週間という短さでしたが、その中であの空気感が作れたことはすごく良かったです。ウエダ監督がゆうばり映画祭の舞台挨拶で『スタッフが少なかったので、放ったらかし状態でした』と言っていましたが、それで逆にみんなと仲良くなれた気がします」。
演技のアプローチ方法は近年変わっていき、今は敢えて頭を真っさらにした状態で現地に入るという武田。「私はアドリブをバシバシ入れちゃう方ですが、みなさんもそれに対していろんな反応をしてくださいました。私は頭を使うことが昔から苦手でして(苦笑)。今回も、誰かの台本をちらっと見たりすると、すごく細かくメモが入っていたりして、本当にみなさんのことを尊敬しました。でも、私がそれをやると、そればかりにとらわれて、何もできなくなっちゃうんです。昔は台本にあることを忠実にやらなければと思っていたのですが、ここ数年、自分はそういうタイプじゃないなと気づきました」。
何か、そういうふうに切り替えるきっかけがあったのか?と尋ねると、彼女がリスペクトしてやまないブルース・リーの名前が挙げられた。「ブルース・リーさんの『考えるな、感じろ』と言うのを聞いて、ああそうだなと。セリフも覚えようとして覚えると、1つ間違っただけで全部がわからなくなってしまう。だから覚えようとするのではなく、なんとなくパラパラと読んでいき、自然とそのセリフが出るような感じで持っていくようにしています。ブルース・リー感覚で生きてますね」。
さすがはアクション女優!演技の仕方も男前である。彼女は、空手も黒帯だが、空手と女優業と両立させることは、精神衛生上、とても良いことだと言う。「空手って、常にポーカーフェイスでいなければいけなくて、組手の試合の時も、絶対に『痛い』という表情を出してはいけないんです。判定負けにされちゃうから。だからどんなに痛くてもきつくても耐えなきゃいけない。また、絶対に道場では泣いてはいけないから、泣くんだったら人の見てないトイレで泣けと言われてきました。でも、お芝居は真逆で、アクションだと痛さをどれだけ痛く表現できるかを問われることの方が多い。そういう意味では、役者になって、初めて自分を吐き出す場所を見つけられた気がします」。
愛くるしい笑顔と、男顔負けの身体能力のギャップが魅力の武田梨奈。身心ともに鍛錬してきた強さに裏打ちされた美しさは、彼女ならではのものだ。同ゆうばり映画祭では「第一回ニューウェーブアワード」の女優部門を受賞した彼女が、今後、どういうウェーブを巻き起こしていくのか、実に楽しみである。【取材・文/山崎伸子】