役所広司、岡田准一の頼もしさを語る!『蜩ノ記』で初共演

インタビュー

役所広司、岡田准一の頼もしさを語る!『蜩ノ記』で初共演

中島哲也監督作『渇き。』(公開中)で、史上最低のクレイジーなオヤジ役の熱演が話題となった役所広司。次なる出演作は、がらりと趣向を変えて挑んだ『雨あがる』(00)の小泉堯史監督最新作『蜩ノ記』(10月4日公開)だ。本作では、何かを達観したような穏やかな人柄の武士役を熱演。岡田准一との初共演も話題となっている。役所広司にインタビューし、役作りや岡田との撮影裏話について話を聞いた。

原作は、葉室麟の第146回直木賞受賞小説。役所は、あらぬ疑いで切腹を命じられ、幽閉されたまま藩の歴史「家譜」を手掛ける主人公・戸田秋谷役。「秋谷には、とても3年後に腹を切って死んでいく人には思えない普通さがあります。かすかに笑ったかのような微笑みが人を惹きつける、人を楽にしてあげられるような雰囲気が出せたらと良いなと思いました」。秋谷の境地は理解できましたか?と尋ねると「できません」と苦笑いする役所。「でも、脚本と原作を読めば、何か染みこんでくるものがありました」。

岡田准一は、秋谷の監視役を命じられた檀野庄三郎役を演じた。「“岡田くん”なんて呼んでいるけど、彼は歌や踊りから始まり、俳優としてのキャリアも長いでしょ。これまでにたくさんの作品を背負ってきたベテランですから。岡田くんが『蜩ノ記』の後、1年間、時代劇(NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』)をやることも決まっていたので、映画の現場でも何かヒントになるものがあったんじゃないかと思いますよ」。

役所は、岡田について、とても立派だったとべたぼめする。「岡田くんは、本当に武道が好きな人で、時代劇の扮装をしても、刀を振っても、さまになるわけです。現場には、子供の頃、チャンバラごっこをしてない子たちがいっぱいるわけで。たとえば、エキストラの子が、平気で刀を逆さに挿したりするんです。今どき、時代劇が似合う若者って少ないんですよ。小泉監督が居合の達人で、有段者ですが、岡田くんは指導を受けても、非常に吸収力が速かったです」。

武闘派の岡田は、カリ、ジークンドー、USA修斗のインストラクター資格を持っている。「今回の岡田くんは、居合のシーンがあるので、撮影の合間にしょっちゅう刀を振っていました。また、自分がやっている武道も、常にトレーニングをしていないと、免許皆伝を取り上げられるそうで、鍛えてなきゃいけないと、毎晩階段を走っていました」。

役所は、岡田の頼もしさに感心しながら、時代劇をもっと若い人にも見てほしいと訴える。「映画って、いろんなタイプのものがあります。一度見て、何かが引っかかったら、何年か後にもう1回見た時、全然違った映画に見える場合もあるんです。僕なんかも、1回だと全然見きれなくて、後になって、自分の人生のなかでいろんなことを教えてくれたなと思えます。だから、ああ、面白かったというだけの映画ももちろん良いんですが、やっぱり何かこう、考えさせてくれる映画とか、心に残る映画も見てほしい。僕なんかの時代は、みんなませていて、わかりもしないのに難しい映画を見ていました。でも、そういう映画を、もう1回、年取ってから見てみると、こんなに面白かったんだと思うわけです」。

さらに、今の日本映画に対する思いも吐露。その背景には、『渇き。』と『蜩ノ記』という対局にあるような作品選びの意味するところも見えてきた。「昔は国内だけじゃなくて、いろんな国から尊敬されてきた日本映画ですから、今後もそうあるためには、非常に個性的な映画もなければいけないと思っています。やっぱり日本映画が、最近面白くないと言われるのは嫌じゃないですか。でも、映画の今後って、観客が作ってくれるものなんです。観客の応援なしでは、僕たちもいろんな冒険ができないから。だからこそ、若い人にどんどんいろんな映画を見てほしいです」。

力強い存在感で、時代劇を牽引してきた役所広司と、今後を担う存在である岡田准一。役柄同様に、しっかりと築き上げた信頼関係が、スクリーンからひしひしと感じ取れる。黒澤イズムを受け継ぐ小泉組が放つ本物の時代劇『蜩ノ記』を見て、日本映画の底力を感じてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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