鈴木京香と三浦友和が語る、結婚観と夫婦の理想型とは?
東北の地で、医師を務める夫婦をはじめ、東日本大震災の復興に向け、ひたむきに生きる人々の姿を追った『救いたい』(11月22日公開)。そのタイトルは、尊い命を救おうと、日々医療に携わる夫婦の思いを、端的に表わしている。演じたのは、鈴木京香と三浦友和。特別な思いをもって本作に挑んだ2人にインタビューし、被災地での撮影エピソードや、震災から3年経った、いまの心の内を聞いた。
鈴木は、仙台の医療センターで麻酔科医を務める妻・川島隆子役。三浦は、被災地で地域医療に従事する夫・貞一役に扮した。仙台出身の鈴木は、「私がやらせていただくのはありがたい話だなと思いましたし、しっかりやらないといけないと思って取り組みました」と真摯な表情を見せる。さらに「震災のことだけじゃなく、医療の、それも特殊な状態で関わっている方々のこともしっかり描いてあったので、ひとりの職業を持った女性が、どう前向きに未来に向かっていくかを描くお話だとも感じました」と語った。
三浦は「重い話ですからね。3.11のその後ですが、見てくださる方が『そんなのウソだよ』というようなことにはならないようにしたいという思いで最初は入りました。脚本が素晴らしかったので、あまり役作りで、気張りすぎずにやろうと思いました」と、オファーを受けた当時を振り返った。
離れて暮らす夫婦だが、互いを尊重し、思いやる姿がとても素敵だ。鈴木は「私は結婚生活の経験がないので未知の世界ですが、この夫婦はべったりしてないけど、本当に芯の部分でわかり合っているなと思いました。隆子が自分のことを責めるシーンがあるのですが、その時にだんな様が『俺の女房の悪口を言うやつは許さんぞ』と言うんです。本当に、なんて素敵な関係なんだろうと思いました」と感心する。
三浦も「ああいうことを言えると良いですね。結婚って最初は“好いた惚れた”でしょ。そこから10年、20年経った時のベストな夫婦の形かなという気がしました。深いところで結びついているのが素晴らしい」と言う。三浦自身についても尋ねてみると、「そんなドラマのようなセリフは言いませんが、そういう関係ではあると思います。もう結婚して34年経ちましたが、そういう関係が築けているとは思います。手前味噌ですけどね」と、少し照れながら笑顔を見せた。
本作では仙台ロケを行い、実際に被災地の仮設住宅でも撮影を敢行、被災者の方々もエキストラとして参加した。三浦は「僕は、被災地の仙台へ初めて行ったのですが、正直言って、衝撃でした」と沈痛な思いを告白。「震災から3年も経っているのにね。そういう意味でも、この映画はきちんとみなさんに観てもらわないといけない。津波のシーンも、本当は入れなくても良かったのかもしれないけど、きっと入れることに意味があったんです」。
鈴木も、今回仙台で撮影したことは、とても意味があったと言う。「被災地で映画のロケをしたということで、自分が役者として現地でできることをようやくやれたような気がします。もちろん、遠くから支援の気持ちを送ることも大切ですが、現地で体を動かせたという、気持ちになれました。私自身の郷土に対する思いが救われたというか、できることはやれているんじゃないかと思えるようになったことは大きかったです」。
三浦もうなずき、「今回、携わったことで、自分の中でも変化はありましたね。やっぱり、震災のことを忘れようとしていた自分がいましたから。嫌なことって忘れたいじゃないですか。そういう自分を戒める意味でも、この作品に出演して良かったなと思います」と話した。
それぞれの思いを胸に、役柄を演じ切った鈴木京香と三浦友和。強い絆で結ばれた夫婦や被災地の人々のいまを映し出した本作からは、未来へと足を進める人間の強さが映し出されているので、多くの人に見てほしい。【取材・文/山崎伸子】