戸田恵梨香、10代の葛藤といまの充実感を告白
2013年に人気シリーズ『SPEC』が映画版でフィナーレを迎えた戸田恵梨香。そして2015年、彼女はスクリーンで、新たな輝きを放つ。嘘をモチーフにした『エイプリルフールズ』(4月1日公開)を皮切りに、時代劇の『駆込み女と駆出し男』(5月16日公開)、サイバー犯罪を描く『予告犯』(6月6日公開)と、全く毛色の違う快作3本が立て続けに公開される。戸田にインタビューし、女優としてのいまについて話を聞いた。
『エイプリルフールズ』は、人気ドラマ「リーガルハイ」の脚本家・古沢良太と、石川淳一監督の名コンビが手がけた、総勢27人の豪華キャストによるトルネードな群像劇だ。4月1日、エイプリルフールの1日に起きた7つの嘘の物語が、予想もしなかった感動を巻き起こす。
戸田が演じたのは、対人恐怖症の妊婦・新田あゆみ役。彼女はエイプリルフールの日、天才外科医・牧野亘(松坂桃李)に、彼との子どもを妊娠していることを告白する。亘に全く信じてもらえないあゆみは、業を煮やし、美貌のキャビンアテンダント・麗子(菜々緒)とデート中の亘がいるイタリアンレストランへと乗り込む。
最初にあゆみが登場するのは、ベッドに横たわったまま、亘に電話をするシーンだ。「いちばんどもっているシーンです。あゆみがこういう人だってことが一瞬にしてわからないといけない場面だったので、他の人とやってみないと難しいだろうなとは思っていました。そしたらちょうど撮影最終日になったので、逆にやりやすかったです」。
松坂とはクランクアップの日に初めて打ち解け合えたそうだ。「松坂さんとは、あの撮影で初めてちゃんとしゃべりました。それ以降は、宣伝などをしていくなかで、よくしゃべるようになっていきました」。
映画、ドラマと、数多くのヒット作品の顔として活躍してきた戸田は現在26歳。近年、年齢と共に、オファーされる役どころも変わってきたと語る。「30代が迫ってきたいま、だんだん大人になっていくので、ひとりの人間としても、どんどんいろんな知識などを増やし、自分を磨かないといけないと感じています」
「でも、どんどんいただく役が変わっていくのは当然のことだし、それが面白いことだと、ようやく思い始めました。役を通して自分を客観視することができるから、役者業は面白い特殊な仕事だなとも思います」。
そう思えるようになったのは、つい最近のことだと言う。「ある現場に18歳の女優さんがいたのですが、年齢を聞いてびっくりしたんです。そこから妙に自分の年を実感するようになりました」
「でも、思えば、私は10代の頃がいちばん悩んでいました。作品を2~3本常に掛け持ちしていて、朝、現場へ行った後、午後から違う現場へ行き、その後でまた朝行った現場に戻るというようなスケジュールをこなしていました」
「その時は、生きている実感がなくて、隙があれば寝るという過ごし方で、私は何のために仕事をしているのかがわからなくなった時もありました。でも、20歳頃から掛け持ちを最大限なくしてもらいました」
「そうすることで、ちゃんと役に向き合える時間が作れるようになり、役に集中できるようになったんです。気持ちも楽になり、お芝居がさらに楽しくなっていきました」。
続けて、30代に向けての展望についても聞いてみた。「役者としての野望などは特にないのですが、本当に心豊かな女性になりたいと思っているし、いつもキラキラしていると言ってもらえるような大人になりたいです。そういうナチュラルな年の重ね方をしたいと思っています」。
10代の頃から、ずっと第一線をひた走ってきた戸田恵梨香。常にベクトルは前へ前へと向いているが、年を重ねることで、少し肩の力が抜け、その分、女優としての深みが増してきた印象を受ける。まずは『エイプリルフールズ』から続く3作をご覧いただきたい。【取材・文/山崎伸子】