『寄生獣 完結編』の最高のサプライズとは?
傑作コミックを実写映画化した『寄生獣 完結編』がいよいよ4月25日(土)より公開となる。右手に、謎の寄生生物“ミギー”を宿してしまった主人公・新一の壮絶な闘いを描く本作。人間と寄生生物。『完結編』では、それぞれの種としての主張がぶつかり合い、どのような答えを見出していくのかが見どころとなる。
ミギーをはじめとする寄生生物のCG描写ももちろんだが、壮絶な運命を背負ったキャラクターに扮した役者陣の熱演も見応えたっぷり!山崎貴監督とプロデューサーの川村元気氏に話を聞いた。
「新一の普通のお芝居をするのだって、相当ハードルが高い。ものすごく難しい役」と、山崎監督がまず、敬意を表するのが新一役を演じた染谷将太だ。ミギーを宿したことで起きる新一の変化だけではなく、CGでつくられるミギーとの芝居が必要になる難役を見事に演じきった。
山崎監督は、こう続ける。「完全に一人二役ですよね。でも、CGを合成していけばいくほど、染谷がちゃんとやっていたのがわかるんです。CGを入れてみたらちゃんとミギーの目を見て話している。ミギーとの距離や目線の焦点の合い方も計算してやっているんで、染谷には助けられました。普通のお芝居と同時にミギーのことを考えるって、どういうふうにやっているんだろうと本当に思いますね。脳が二つに割れているんじゃないですか(笑)?」。
川村も「新一は喜怒哀楽のすべてを強く表現することが求められるキャラクター。右手に変なものがついていて、顔が割れる人がどんどん出てくる映画なのに、見ている方はやっぱり、新一の気持ちに寄り添うことができる。彼のドラマや感情を最後まで追いたいと思えるお芝居をするというのは、あの若さで類を見ないですよね」と大きくうなずく。
そして『完結編』で大注目なのが、人間の子供を出産し母親となったパラサイト・田宮良子の変化だ。山崎監督は「すさまじいですよ!田宮というキャラクターが、みんなすっごく好きになると思います。深津さんに田宮をお願いした意味がすごく出ている。『完結編』では、深津さんは口だけになるなどいろいろしていますからね。見ていただくと『おお!』っとなりますよ」と田宮役の深津絵里の演技を絶賛。
川村も「深津さん演じる田宮が、『完結編』で最高のサプライズかもしれないですね」と感心しきり。「日本人俳優による芝居のレベルでいうと、たぶん最上級だと思いますよ。僕は原作を読んだときに、田宮のラストシーンで泣いたんです。映画でも、原作を読んだときと同じか、それ以上に感動しました。感情がないというキャラクターの性質はそのままに、こんなに心を動かされるものなのかと」。
さらに「だから、染谷将太は大変ですよ!『完結編』では、ピエール瀧さんから始まって、深津絵里さんに浅野忠信さんと、俳優としても強敵ばかりと競演。えらいことになってます。今、それらの俳優たちと真っ向勝負できる若手俳優は他にいないでしょう」と楽しそうに笑う。
山崎監督も「総当たり戦ですからね!」と笑い、「高性能な人たちが続々とやってくるわけですから、監督冥利に尽きます」と晴れやかな表情を見せた。「その人たちと文学的な作品をつくるんだったら、ありえるキャスティングかもしれない。でも『寄生獣』って顔が割れる映画ですからね。それにこれだけの役者さんが集合してくれて、100パーセントのお芝居をぶつけてくれた。ちょっと快感でしたね。このジャンルがきちんと認められた気がしました」。
川村は俳優陣の熱演を目の当たりにして、本作が日本における映画作りの大きなターニングポイントとなったことを実感したそうだ。「業界的な見方をすると、CGの技術が上がったということももちろん大きいですが、グリーンバックで見えないものに対する演技を俳優の皆さんが完璧にやってくれた。CGに対して俳優さんのお芝居が追いついていなかったら、すべてが嘘っぽく見えてしまいますから。それは日本映画のスタッフやキャストのレベルが、一つ上の段階になったということ。本作でその一歩を踏み出せたと思っています」。【取材・文/成田おり枝】