“日本色”が際立った第68回カンヌ国際映画祭
是枝裕和監督の『海街diary』(6月13日公開)をはじめ、第68回カンヌ国際映画祭には日本人関係の作品が非常に多く登場した。
コンペには渡辺謙出演の『ザ・シー・オブ・ツリーズ(原題)』(16年公開)、妻夫木聡出演の『黒衣の刺客』(秋公開)があり、また、ジャ・ジャンクー監督『山河故人(原題)』は製作陣が日本のオフィス北野なので“準日本作品”と言ってもいいだろう。
監督週間に出品された三池崇史監督の『極道大戦争』(6月20日公開) は大盛況。映画は大ウソをついてどれだけ観客をたぶらかしワクワクさせるかが勝負、という意味では、今回の日本映画の中で一番。観客をノセるというミッションで今年のカンヌ最高の部類に入るのではないか。
旧作のデジタルリストアと映画に関するドキュメンタリーを上映するカンヌ クラシックには松竹の『残菊物語』(1939・溝口健二監督)と、初参加になる東映の『仁義なき戦い』(73・深作欣二監督)が参加している。『仁義なき戦い』の上映では、「オー」とか「ウー」とか観客の鼻息が聞こえて、松竹文芸作品の静かな芸術映画好きの反応とは違うところが興味深かった。
ワーナーの『リトルプリンス 星の王子さまと私』(11月公開)では日本人ボイスキャストがカンヌ入り。長い俳優人生で初めてのカンヌという津川雅彦、瀬戸朝香、主役登板の最年少記録となった鈴木莉央の3人がレッドカーペットを歩いた。
2020年のオリンピックを見据えて政府が経産省主導で力を入れている日本文化の売り込みのなかで、映画が属するのはコンテンツビジネスの分野である。昨年までしばらく途切れていた(その理由は第一に経費削減のため、だったのだが)日本パピリオンの復活およびジャパン・パーティの復活などが「ジャパン・デー・プロジェクト」として、バージョンアップして再稼働した。
そこには映画だけではない、日本コンテンツの売り込みが関わっている。「KANPAI NIGHT」と名付けたパーティには1100人の参加があったという。くまモンあり、コスプレイヤーありの、映画とはちょっと違うかもしれない“目玉”作りに、いかがなものかという批判もある。映画の祭典であるカンヌで「日本の映画」をアピールするのならもう少し他のところにお金を配分して欲しいというのも納得できる。その声は届くのだろうか。【シネマアナリスト/まつかわゆま】