ドイツの映画祭で安藤サクラ旋風が吹き荒れる!
6月2日からドイツのフランクフルトで開催されている世界最大規模の日本映画専門の映画祭、第15回ニッポン・コネクションに女優の安藤サクラが日本から参加し、現地で“サクラ旋風”を引き起こしている。
前年度に製作、公開からされた中から厳選し、100本近い最新の日本映画を上映する本映画祭において、今回の目玉は2014年度の女優賞を席巻した安藤サクラだ。
プログラミングに携わっているディレクターのマリオン・クロムファスは、「2014年度の日本映画は、吉田大八監督の『紙の月』や豊島圭介監督の『花宵道中』、三池崇史監督作『喰女 クイメ』、熊切和嘉監督の『私の男』など、強い意志を持つヒロインが際立つ作品がそろいましたが、中でもこの年の象徴ともいえる作品が『100円の恋』と『0.5ミリ』。ヒロインを演じた安藤サクラさんの内面の強さが際立つ演技が素晴らしい」と絶賛する。
6月4日の現地時間20時から最も大きい劇場で上映された『100円の恋』は大入りの状態で、上映後は観客席から「ブラボー」の声が沸き上がった。まるでライブのアンコールを求めるような大きな拍手に迎えられて、武正晴監督、脚本家の足立紳と共に壇上にあがった安藤はいつまでも鳴りやまない拍手のリズムに合わせて軽やかに飛び跳ね、映画同様、コケティッシュな魅力を振りまいた。
質疑応答では、実家に引きこもりの32歳のヒロインが、ボクシングを経て内面も外見も変貌していく劇中の変化に質問が集中。「本当にボクシングをしているんですか?」「縄跳びも?」との質問には「もちろんです。たまに、CGだったり、スタントで吹き替えをしているかと聞かれますけど、一切、使っていません」というと、再び大拍手が。
「監督を責めているわけじゃないけど、撮影期間が2週間という限定されたものだったので、短期間の中で撮影をしながら、ものすごくだらけきった肉体からボクサーの絞った体へと変えていかなくてはいけなかった。もう一生分と言えるほどボクシングをしたし、限界まで挑みました」との言葉に、再び「ブラボー」の声が沸き上がった。
この熱気が冷めないまま、23時から武監督と安藤サクラによるトークショーも開催され、こちらも100人以上の観客が集まり、深夜24時まで途切れることがなく観客から熱い質問が繰り広げられた。
劇中でのボクシングシーンでは、ボクシングの経験があった安藤サクラが演じることで、実際の殴り合いの撮影が可能になったことを武監督が説明し、そのことを受けて、「どの作品でも、美しいだけの女性像ではなく、痛さや醜さまでも惜しむことなく演じきれるのはなぜ?」という質問も出た。
「格好悪い言い方になってしまうけれど、どの作品においても死ぬ気で戦っているし、この体を捧げるつもりで演じています。日本には俳優と女優という言い方があるのだけれど、わたしはいつも女優部門にくくられて評価されて、俳優として評価されないことへの口惜しさを感じていた」
「でも、最近は、いつか母となり、子どもをもつ可能性を考える機会が増えてきて、そうなると女優としての実感や可能性を抱えながら、俳優としての挑戦もできるんじゃないかと考えている」という安藤の考えに、惜しみない賛辞が寄せられていた。【取材・文/金原由佳】