注目度は過去最高? 今年のカンヌは百花繚乱!

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注目度は過去最高? 今年のカンヌは百花繚乱!

今年62回目を迎えるカンヌ国際映画祭。“若い作家、映画産業的に小さな国”に光を当てようという昨年の試みが「地味」のひとことで片づけられたのを反省してか、今年は常連さんが集められ、老舗国際映画祭の華やかさを取り戻した。とはいえ、「作家の映画」が軽んじられる時代に反旗をひるがえすという宣言をして、カンヌ選出映画の基準は作家性にあると改めて定義した。

さて、今年のラインナップを見てみよう。カンヌ史上初めてアニメーションがオープニングを飾る『カールじいさんの空飛ぶ家』はピクサー初の3DCG作品。コンペ外の招待作ながら『モンスターズ・インク』(01)の監督と『ファインディング・ニモ』(03)の脚本家が組んだ話題作だ。

カンヌが世界に送り出した監督たちが、再び戻ってくる点にも注目だ。パク・チャヌク監督、アン・リー監督、ジョニー・トー監督、ケン・ローチ監督、ラース・フォン・トリアー監督、ペドロ・アルモドバル監督、クエンティン・タランティーノ監督、ミハエル・ハネケ監督、ツァイ・ミンリャン監督と、なんとも豪華な顔ぶれが揃う。

公式上映のメインとなるコンペティション部門は20本。残念ながら日本作品はないが、日本ロケ・日本人出演はある。一部東京でロケが行われたギャスパー・ノエ監督の『Enter the Void』と、菊池凛子が主演するイザベル・コイシェ監督の『Map of the Sound of Tokyo』。『ピアノ・レッスン』(93)のジェーン・カンピオン監督もカンヌに帰ってきた。

招待作品でヒース・レジャーの遺作となった『The Imaginarium of Dr.Parnassus』は、撮影途中で亡くなったレジャーの代わりにジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファースが出演したという話題作。また、サム・ライミ監督のホラー『Drag Me to Hell』、アレハンドロ・アメナーバル監督の『Agora』と怖い系もある。

公式上映のもう一つの長編部門が“ある視点”だが、こちらには是枝裕和監督の『空気人形』が出品される。心を持ってしまったリアル・ドールを、『リンダ・リンダ・リンダ』(06)に出演した韓国女優ペ・ドゥナが演じている。『グエムル 漢江の怪物』(06)のポン・ジュノ監督作『母なる証明』もこの部門である。

並行週間と呼ばれ、時を同じくして上映される監督週間には、諏訪敦彦監督とイッポリット・ジラルドの合作による『ユキとニナ』が上映される。並行週間のもうひとつ批評家週間は処女作か二本目の作品を対象とするので、見てみなければわからないというのが売り。

いずれにしろどの部門も百花繚乱という感じ。今年はどんな作品に出会えるのだろう、どんな作家の誕生に立ち会えるのだろう。楽しみである。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

■コンペティション部門

◇ペドロ・アルモドバル『Los Abrazos Rotos(Broken Enbraces)』、◇アンドレア・アーノルド『Fish Tank』、◇ジャック・オーディアール『Un Prophete(A Prophet)』、◇マルコ・ベロッキオ『Vincere(To Conquer)』、◇ジェーン・カンピオン『Bright Star』、◇イザベル・コイシェ『Map of the Sounds of Tokyo』、◇グザヴィエ・ジャノリ『A l'Origine(In the Beginning)』、◇ミヒャエル・ハネケ『Das Weisse Band(The White Ribbon)』、◇アン・リー『Taking Woodstock』、◇ケン・ローチ『Looking for Eric』、◇ロウ・イエ『Spring Fever』、◇ブリランテ・メンドーサ『Kinatay』、◇ギャスパー・ノエ『Soudain le Vide(Enter the Void)』、◇パク・チャヌク『Bak-Jwi(Thirst)』、◇アラン・レネ『Les Herbes Folles(Wild Grasses)』、◇エリア・スレイマン『The Time That Remains』、◇クエンティン・タランティーノ『Inglourious Basterds』、◇ジョニー・トー『Vengeance』、◇ツァイ・ミンリャン『Visages(Face)』、◇ラース・フォン・トリアー『Antichrist』

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