三池監督が語る市原隼人とリリー・フランキーの共通点

インタビュー

三池監督が語る市原隼人とリリー・フランキーの共通点

市原隼人×三池崇史監督作『極道大戦争』(6月20日公開)は、そんじょそこらのヤクザ映画ではない。また、しっくり来るジャンルやカテゴリーも見当たらない。本作には、それくらい、すさまじい破壊力がある。なんというか、いまの映画界に殴りこみを入れているような感じである。彼らがどんな思いで、本作に立ち向かったのか?インタビューに答えてもらった。

『極道大戦争』は、噛みつかれてヤクザ化した人々が、壮絶な戦いを繰り広げるという奇想天外なアクション映画だ。市原が演じたのは、ハンパ者のヤクザの若衆・影山亜喜良役で、地元から人望の厚い神浦組の親分・神浦玄洋(リリー・フランキー)に憧れ、組に入る。

市原は、本作について「僕がこれから出る作品や、過去の作品も含めて、すべての作品が過去になるような新たなジャンルじゃないかと思いました」と屈託ない笑顔を見せる。

三池監督もうなずき、静かな口調でいまの映画界に苦言を呈した。「ヒットしそうだから映画を作るという感じが、我々の作る側の風潮です。だから、闇に向かってものを投げるようなものは歓迎されにくい。今回、それを受け入れてくれたのが、(配給の)日活さんでした」。

神浦親分役のリリー・フランキーについて三池監督は「暴れる彼を見てみたかった」ということでキャスティングをした。「ご本人も内心、暴れたかったんです。映画で汗をかいたことがないと言っていましたし。今回やってもらったら、アクション映画もやれるということで可能性が広がると思いました」。

市原は、リリーについて「存在がすべてハードなんです。でもすべてがリリーさんだからお洒落に見える」と印象を語る。「親分がしゃべることも、めちゃくちゃハードなんですが、はたから見ると、お洒落なカフェにいるような感じがするんです。それが美しくも見えるし、面白くも見えるし、狂気にも見える。器がすごく大きい方です。ただ、いくら話してもわからない。どんどんいろんなものが出てきそうで、未知数な方です」。

三池監督は、リリーと市原の眼差しが似ていると言う。「眼の形や顔つきは全然違うけど、何かをずっと見つめる時の気配が似ている。同類のヤバさを感じます。あれは、要求して作れる目じゃない。表情は作れるけど、眼差しだけはどうあっても演出できないから。目には、演技だけじゃなく、その人間がどう周りを見ているのかというものがにじみ出る。そういう眼差しをもった数少ない人たちです」。

アクションはケタ外れにダイナミックで独創的だ。市原は、格闘家でもある『ザ・レイド』(12)のヤヤン・ルヒアンとの格闘シーンに興奮したそうだ。「三池さんの現場は生ものなので、どんどん変わっていくんです。ヤヤンさんと次はどんなことがやれるのかなと、毎回すごく楽しみでした。小さい頃『あそこに行っちゃダメ』と言われているところに毎日行っているような、そんな感じで毎日現場が楽しみでした」。

最強のゆるキャラKAERUくんとの激闘シーンにも驚嘆する。「本当に有段者ですから、怖かったです。動きもキレますし、まさかKAERUくんからこの動きが!という、ギャップがすごくて。異空間でしたね。どこかに違和感があったのですが、それがだんだん心地良くなっていきました」。

三池監督は「けっこう危険なヤツなので、大変だったと思います」と苦笑い。「実はKAERUくん、(着ぐるみなので)目がよく見えないんです。その状況で本気でいくので、全部受ける側で調整しないといけなかった。でも、顔がでかいから、距離感を取るのが難しい。距離を間違うとボコボコ入っちゃうから、危なかったです」。

これまでの極道映画やアクション映画の常識を覆す強烈な1本『極道大戦争』。ヤクザ、ヴァンパイア、オタク、KAERUくんによる熾烈な戦いは、これまで見たことのない異業種交流戦だ。これは、スクリーンで観戦する価値があるぞ!【取材・文/山崎伸子】

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