瑛太、『ガマの油』役所広司監督からの救われた一言
現在大ヒット中の『余命1ヶ月の花嫁』を始め、今年は4本の出演作が公開される瑛太。8月には初の舞台も控える彼が、新作『ガマの油』(6月6日公開)がもたらした効用を語ってくれた。
本作は、日本映画界を代表する俳優・役所広司の初監督作。瑛太が演じるのは、役所扮する大人になりきれない主人公・拓郎の息子、拓也。彼の身に降りかかったとある出来事をきっかけに展開する物語の中で、父親と登場人物たちを紡ぐ糸のような役割を果たしている。
衣装合わせの際、演じた拓也について役所監督から「独り立ちしている男らしさを求められた」と語る瑛太は、「髪を縛るヘアスタイルも監督からの提案だった」と明かす。演出についても「今回は本読みの段階から、台詞の言い回しから間まで細かく演出をつけてくださったので『委ねていいんだ』という安心感がありました」と振り返る。
「一番印象的だったのが『ヨーイ、スタート』を掛ける前に監督が言った『楽しんで!』という言葉。親友である(サブロー役の)澤屋敷くんと久々に病室で会話するシーンだったんですけど、救われるような気がしましたね。芝居を楽しむ感覚なんて忘れかけていましたから」
これだけではない。本作は彼に他にもたくさんの“効用”をもたらしたという。キラキラした笑顔が素敵な拓也の恋人・光を演じたの二階堂ふみもそのひとりだ。
「二階堂さんはとても一生懸命で、自分に足りないものを見せてもらいました。俳優を続けていると、少しずつ覚えてしまうものだったり、癖みたいなものが出てきてしまうんですけど、原点に立ち戻って、透明に近いところに自分を戻したいなと。でも捨てられないものや捨てたくてもくっついてきてしまうものがあるんですけどね。そこが俳優の面白さでもあるんですけど、克服したい部分でもあります」と刺激を受けた様子。
「この映画を観ると、あの世とこの世の境目が、ちょっとだけやわらかくなった感じがしますよね。身近な人が亡くなる悲しい気持ちもやわらかくなる。なんだか監督、俳優としてというより、人としての役所広司さんから何か教わったような気がします」
穏やかな口調でやわらかな笑みを浮かべた瑛太に、俳優の魅力を聞くと「自分と向き合い、人と向き合いながら、個々ではなく、みんなで勝負するところ。でもそこにあるのは、勝ち負けじゃなく“出会い”なんですよね」と語り、再びかみ締めるように「そう、出会い」と締めくくった。そんな“出会い”がもたらす効用は、本作にもしっかり焼きつけられている。【MovieWalker/大西愛】