向井理が身につけた「柔らかさ」。心境の変化を明かす
向井理主演の人気ドラマがスクリーンへと舞台を移し、『S-最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』となって8月29日(土)より公開される。映画ならではのスケール&ド迫力のアクションが展開する本作で、主演としてまさに「命をかける思い」で現場に臨んだ向井。一歩間違えば大ケガにもつながりかねない現場を乗り切るための覚悟。そして、役者としての心境の変化を語ってくれた。
警察庁特殊急襲捜査班“NPS”の活躍を通して、現代日本の抱える問題を浮き彫りにする本作。劇場版では、ビッグコミックにて連載中の同名原作コミックの中でも人気の高い「プルトニウム編」にトライ。日本壊滅という未曾有の事態に直面した警察メンバーの奮闘を綴る。海上保安庁、防衛庁、航空自衛隊が撮影に協力し、巡視船やヘリを用いての大規模ロケを敢行したことでも話題だ。
「台本を読んでも壮大すぎて、想像がつきませんでしたね。『タンカーを走る』と書いてあっても、どれくらいのタンカーなのか。『ヘリからロープで降りる』と書いてあっても、そんなこと本当にできるのかと」と向井。「でも、危険なことは連ドラで散々経験していたので、大丈夫かなと思っていました。今回、アクションに関しては吹き替えもせずにちゃんと生身でできたので、すごくよかったと思います」
高所からの降下や激しい戦闘シーンなど、体を張って主人公・神御蔵一號を演じた。「連ドラが始まるときに、プロデューサーからは『ケガのないように』と言われましたが、NPSのメンバーはみんな一回は流血しています(笑)。それくらい大変で危ない現場にいるというのは、みんなわかっていた。こういう現場で『ケガをするな』というのは無理なんです。撮影に影響するような大きなケガがなければいいと思っていました」
「みんな熱い気持ちで取り組んでいた」と振り返る。「実際に前線で戦ってくれている人たちは、本当に命をかけています。だからこそ、僕たちもそれくらいの気持ちでやらないといけないと思って。集中して、気合いを入れてやらないと本当にケガをしてしまうので、慣れてきたり集中力が途切れていると感じたときは、自分にプレッシャーをかける意味でも、率先して気合いを入れるよう、声がけをしていました」。主役として並々ならぬ覚悟を持って臨んだ。
「命をかけて国を守ってくれている人がいる」ということを現実として受け止めたからこそ、本作をスーパーヒーローの物語にはしたくなかったという。「SATの人たちなど、プライベートな面も持ちつつ、それを犠牲にしながらも職務を全うしようとしている人たちがいる。『ああ、やっぱり同じ人間なんだな』と思ったんです。だから、演じる一號たちをスーパーヒーローにしたくないという思いはありました。なるべく体温を感じる人物像にして、もっと生々しいものとして感じてほしかった。『かっこよかったね』だけで終わる作品にはしたくなかったんです」
「誰も死なせない」との信念を持つ一號だが、向井にとって役者という仕事に向かう上での信念はあるだろうか?すると「当たり前ですが、とにかくいい作品にすることが一番大事なこと」とキッパリ。「それと、あまり自分のやり方を作らないようにしています。アイディアを出すことや議論をすることは大事だけれど、それがただのわがままになってはいけない。僕はなるべく柔軟にやっていくべきだなと思っています。だから、すごくシンプルですよ。ただ、『いい作品にしたい』ということしか考えていませんから。共演者の方とのやり取りで見えてくるものもあるし、その現場の空気に乗っかっていった方がいいこともある。あまりこの役柄はこうした方がいいと決めずに、その場その場で感じることを大事にしています」
その“柔軟さ”は、作品を重ねるごとに身につけてきたものだそう。「昔はもっとガチガチに考えていましたね。心配性なので、『こうした方がいいだろう』とあらかじめ考えていって。でもそれがうまくいかなかったり、思いつきでやったことがうまくいったことも多々あったので。同じ作品、現場というのは一つとしてないし、お芝居は一人でやるものじゃない。作品や現場に寄り添って、自然と出てくるものが一番の正解なのかなと思います」【取材・文/成田おり枝】