“ダメ親父”ビル・マーレイの印象は?キュートな天才少年を直撃

インタビュー

“ダメ親父”ビル・マーレイの印象は?キュートな天才少年を直撃

孤独なひねくれ老人とひ弱な男の子の友情をコミカルに描く『ヴィンセントが教えてくれたこと』(9月4日公開)。“人間賛歌”と呼ぶにふさわしい、愛すべき感動ドラマに仕上がった。飲んだくれの毒舌オヤジ・ヴィンセントを演じるビル・マーレイのハマりぶりが痛快だが、勝るとも劣らない存在感を見せつけているのが、彼とバディを組むこととなった少年、ジェイデン・リーベラーだ。初来日を果たしたジェイデンに、ビルとの共演の感想を語ってもらった。

ヴィンセントの隣家に、シングルマザーのマギーと12歳の息子オリバーが引っ越してきたことから物語は始まる。子供相手にも容赦なく毒舌を連発するヴィンセントだが、いつしか彼とオリバーの間には固い友情が芽生えていくのだ。

撮影時は10歳、今では12歳になったというジェイデン。オリバー役との共通点を聞いてみると、「すごく似ていると思う」と分析。「僕たちふたりともとても静かだし、自分の中で物事を考える時間が多いと思います。オリバーは、とても人の内面を見る能力があると思う。ほとんどの人がヴィンセントに会ったら、その内面の美しさには気づかず、ただの酔っ払いのおじさんだと思うんじゃないかな。オリバーはとても面白い役だったので、脚本を読んで『ぜひこの役をやりたい!』と思って。オーディションで役に決まったときはすごく興奮しました」

いじめっ子の撃退法を伝授されたり、競馬場で万馬券をゲットしたりと、日々の生活の中で絆を深めていくヴィンセントとオリバー。ジェイデンはとりわけ、オリバーのスピーチのシーンが好きだという。「クライマックスで、オリバーが学校でスピーチをするシーンがあります。そこでは本当に二人が信頼し合っていることがわかって。ビルと抱き合うシーンは、二人の距離が近づいて、絆ができたということがわかってすごく好きです」

長いセリフを一人で語る、難しい場面となった。「自分一人で何ページにもわたるセリフを話さなければいけないので、すごく緊張しました。僕があまりにも緊張していたので、ビルが『リラックスしろ』と教えてくれて。『瞑想するんだ』と言ってくれたりして、とても助けられました」とビルとの共演を思い出してニッコリ。俳優としても「大好きだった」そうで、「『ゴーストバスターズ』や『恋はデジャ・ブ』のビルが特に好きなんだ」と話す。

「ビルは周りの人の交流をすごく大切にするんです。そしてこれは好き、これは嫌いということがはっきりしていてとても正直。僕も正直な人になりたいと思ったし、彼にたくさんのことを教えてもらいました」と受ける刺激も大きかった様子。「一緒にとてもたくさんの楽しい時間を過ごしました。いろんなプレゼントもしてくれて、スクーターももらっちゃったんだ」とうれしそうにはにかんだ。

ヴィンセントの人としてのあり方から、犠牲や慈悲、勇気を学んでいくオリバー。ジェイデンは本作を通して学んだことについて、こう語った。「自分のために立ち上がることが必要なときがあるということ。そして、ヴィンセントがオリバーに対してしてくれたように、自分が愛する人を、自分よりももっと大事にすること。他の人に思いやりを持つことの大切さを知りました」

撮影を通して、人生における大切なこともたくさん学んだ。その吸収力と聡明さに驚くが、ジェイデン自身もオリバーと同じく、シングルマザーの母親と暮らす少年だそう。インタビュー中、ジェイデンの隣に座っていた母は「勉強に関してすごく頑張る子なんです。とても完璧主義で、そこまでやらなくていいというところまでやってしまう。映画の撮影中は、撮影後に勉強をするので寝る時間が少なくなってしまうほど。成績は全部Aなんですよ」と告白。

顔を真っ赤にして楽しそうに母の話を聞いていたジェイデン。12歳らしいキュートな笑顔にうれしくなるが、「学校はとても大事だと思うんです。演技をすることも、学校の勉強をすることも、自分の将来を導いてくれること。人生で成功できればなと思うので、どちらも大切にしたいです」としっかりとした考えを明かす。

今後は「キャメロン・クロウ監督の『aloha』という作品では、レイチェル・マクアダムスの息子役を演じました。ジェフ・ニコルズ監督の『Midnight Special』では、超常能力を持っていて政府の手から逃れようとしている少年を演じています」と、続々と出演作が相次いでいるとか。「演技が大好きなので長く続けていきたいし、自分の視点でものを作ることができる映画監督にもトライしてみたい」と瞳をキラキラと輝かせる。好奇心だけでなく勉学意欲も旺盛。頼もしく成長中の小さな名優の第一歩を、ぜひお見逃しなく!【取材・文/成田おり枝】

関連作品