なぜ“ややこしい絵描き”を題材に?小栗康平監督が回答

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なぜ“ややこしい絵描き”を題材に?小栗康平監督が回答

現在開催中の第28回東京国際映画祭のコンペティション部門出品作『FOUJITA』(11月14日公開)のティーチインが、10月30日に、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、小栗康平監督が登壇した。

小栗監督は、日本人画家・藤田嗣治を題材に選んだ理由を問われ、「実は藤田嗣治にそれほど関心があったわけではなかったんです。矛盾が多く、ややこしい絵描きさんというイメージでしたから」と回答。しかし、とある人物から誘いを受けたことで、書籍などで多くのエピソードを読み、フランスで彼の絵画を見て歩いたという。

実際に絵を鑑賞した結果、小栗監督はことごとくエピソードを忘れることにしたそう。彼のエピソードの騒がしさとは異なった“静けさ”を、静かな絵から感じた取ったからだ。「『FOUJITA』の出発点は“静けさ”。そこから具体的に作品を動かしていきました」と語った。

また、藤田役に俳優のオダギリジョーを起用した理由については、「10年も映画を離れていると、どんな役者が良いのか分からなくなる(笑)。けれども、オダギリさんはストレートに決まりました。彼の持っている質と、エンターテインメントではないところを目指すこの作品の質の相性を考えたんです」とコメント。

さらに「(5番目の妻)君代役に中谷美紀さんを選んだのは、なかなか君代を受け止められる人がいないと思ったから。加瀬亮さんの寛治郎役も重要な役どころで。彼はたぶん主役を演じるような人だと思うので、役の大きさからいって受けてくれないと思ったんですが、ためらいなく受けてくれました。すごく良い俳優で、熱心。台本を渡したら、結構長文の質問状が『もういいよ』というくらい来た(笑)。そのくらいマジメな方で、あの長いセリフは彼じゃないとできなかったと思います」と、振り返りつつ、キャストの裏話を明かした。

『FOUJITA』は、戦前のフランスを中心に活躍した日本人画家、藤田嗣治の波乱の生涯を描く人間ドラマ。“乳白色の肌”の裸婦像でエコール・ド・パリの寵児となるも、日本に帰国し、戦争協力画を描くことになった藤田(オダギリジョー)の、絵に向き合う真摯な姿勢を映しだす。【取材・文/平井あゆみ】

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