オダギリジョー、反抗児から改心「心を入れ替えなきゃダメかな」
日本人画家・藤田嗣治の半生を描いた映画『FOUJITA』(11月14日公開)の美大生向けティーチイン試写会が11月4日に都内で開催され、オダギリジョー、中谷美紀、小栗康平監督、神奈川県立近代美術館・水沢勉館長が出席。小栗監督の現場を経験したオダギリが、「今回、まったく監督に反抗をしなかった」と役者としての大きな心境の変化を明かした。
美大生からの質問に答えることになったこの日。学生から、「絵は一人で描くものだけれど、映画は大勢で作るもの。監督と役者でズレが生じた場合、役者さんはどのように反抗するのか」という質問が上がると、オダギリは「僕は普段は結構、反抗的なんですよ」とにっこり。「その役をすべて理解しているつもりで現場に来ている。監督は、いろいろなところに気を遣わなければいけないものだから、この役に関しては僕に丸投げしてくれというつもりで現場にいます」と「任せてくれ」という思いで、これまでは現場に挑んできたという。
ところが、「今回に関しては、監督の脳みそがすごく面白くて」と明かし、「これは監督にすべて預けた方が賢いなと思った。反抗してもこれはとんでもない失敗になる気がした。今回に関してはゼロ反抗です」と監督のいうとおりの芝居にトライしたそう。
これまでは「オダギリジョーとはこういうものだという見せ方もたまにはしちゃったし、俳優のエゴが前に出てしまうことも多々あった」と続けるが、「今回初めて、自分が今まで見てきたオダギリジョーという役者とまったく違うレベルで芝居ができた。監督に身を預けた結果、反抗をまったくしなかった結果、こういう高みに引き上げてもらえた」と力強くコメント。「役者としても今後、心を入れ替えなきゃダメなのかな。そういう時期に来ていますね」と会場を笑わせながら、小栗監督との出会いで得た自身の変化にうれしそうな表情を見せていた。
一方の小栗監督は「映画を撮りながら、いつも映画という作品の主語は誰が持っているのかを考える。それは特定できないもの。絵もそうだけれど、主語があるようでない。それが豊かなことだと受け止めた方が絵の鑑賞も楽しくなるし、映画の奥行き、間口も広がっていくと思う。それぞれが見えない主語を探しながら一緒に仕事をする。それが映画の仕事だと思っている」と持論を語ると、オダギリや中谷、会場も大きく刺激を受けた様子だった。【取材・文/成田おり枝】