『はなちゃんのみそ汁』の広末涼子の演技に滝藤賢一が感涙

インタビュー

『はなちゃんのみそ汁』の広末涼子の演技に滝藤賢一が感涙

実話ブログを基にした感動エッセイの映画化作品『はなちゃんのみそ汁』(2016年1月9日全国公開)が、12月19日にテアトル新宿で先行公開される。広末涼子演じるヒロイン・千恵は、乳ガンを患っているが、完成した映画は、ただのお涙ちょうだいの映画ではなく、笑いと涙を交えた人生讃歌の映画となった。ひたむきに生きる千恵の母性を成熟した演技力で体現した広末と、夫・信吾役でシリアスかつコミカルな演技で新境地を見せた滝藤賢一にインタビュー!

『はなちゃんのみそ汁』の原作は、ガンでこの世を去った安武家の母と5歳の娘と夫との日常をつづったブログから生まれたエッセイで、テレビドラマ化されたり、教科書に採用されたりして、社会現象を巻き起こした。

広末が脚本を読んだ時の感想について「すごく素敵なお話なのですが、内容が内容だけに、どうしても悲しくシリアスになりがちでした。でも、最終的にはそこから脱して、笑って泣ける台本となりました」と言うと、滝藤も「想像とは違い、とてもポップに描かれた台本でした。脚本を読んで、即『やらせてください!』と言いました」とうなずく。

滝藤は、コメディのさじ加減には苦労したようだ。「脚本が面白かったので、そんなに上塗りしなくても良いんじゃないかと僕は思ったのですが、監督から『普通の芝居は見たくないんです』と言われまして(苦笑)。やる方はいくらでもやれますけど、根っこに苦しみや悲しみを持っていないと成立しないので、難しかったです」。

なかでも、広末演じる千恵が、“ガン”という響きに悲壮感が漂っているから、“ガン”を“ポン”に置き換えてほしいと、夫と千恵の姉・志保(一青窈)に提案するくだりがなんとも可笑しい。滝藤は「あのシーンを笑ってもらえるとうれしいです。僕は、相当苦しみましたから。広末さんの芝居は完璧にできあがっているのに、こちらサイドが決まらない状態が続いたので。結局、最終的にシンプルな形になりました」。

広末は、そのシーンを台本で読んだ時、笑い泣きをしたと言う。「すごく好きなシーンです。やはり、言いたいことを発散し、ネガティブな要素をぶつけながらもポジティブに生活していくというのは、病気と闘っている方のテーマだと思うんです。一方で、体調や精神面で、そうなれない時があるのも事実だと思います。今回の映画では、敢えてそういうネガティブな部分を排除して、理想であるポジティブな部分がクローズアップされています。それは映画だからできることだと考えながらやりました」。

広末は、現場での滝藤について「常に気持ちがマックスで、いつも目を潤ませていらして、ちょっと気を抜くと泣いてしまうんです」と優しい目線を送る。

実際、泣いてはいけないシーンで、思わず感涙してしまったことが多々あったという滝藤。「自分でも理由はわからないのですが、なんだか涙があふれ出てくるんです。初めての体験でした。正直なところ、僕はすごく冷めているので、滅多にないことなんです。芝居で涙を流すことは苦手中の苦手ですから」。広末は「私も滝藤さんからそううかがっていたのですが、蓋を開けてみたら真逆だったので、あれ?と」と笑う。

滝藤は「広末さんのお芝居に泣かされたんです。試写で完成した映画を観た時、とても丁寧にディテールを積み重ねられていて、僕は広末さんにくぎ付けになりました。同じ俳優として尊敬します」と手放しで絶賛する。広末は恐縮しながら「ありがとうございます」と照れながら頭を下げた。

広末は「滝藤さんの感情が、常にあふれていらっしゃったので、どんなにコメディ的にしても、絶対に軽々しく映らないという安心感があり、すごく心強かったです。気持ちが1本通っているからこそ、コミカルな演技にも、切ない気持ちになったりキュンとさせられたりしました」と現場を振り返った。

滝藤も「広末さんとは初共演でしたが、これまで広末さんの作品はたくさん観ていました。みなさんがご存知のとおり、快活で可愛らしい面もありますが、芝居に向き合うと、多くの経験で培われてきたものがひしひしと伝わってきました。楽屋では少女のようでしたし…。だから、撮影は本当に幸せでした。あの時間を返してほしい(笑)」と嘆願する。

広末涼子と滝藤賢一。互いに引き出し合えた、俳優同士の幸せな共演関係にぐっと来たインタビューだった。【取材・文/山崎伸子】

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