『ターミネーター4』の日米興行に見る宣伝戦略の裏側

コラム

『ターミネーター4』の日米興行に見る宣伝戦略の裏側

6年ぶりに復活したシリーズ最新作『ターミネーター4』が6月13日に公開され、ぶっちぎりの興行成績ナンバー1をマーク。先行公開含めて合計10億2091万円の“大入り袋”となった。

これまでの数字でいくと、『T1』(84)はトータルで興収10.6億円だったが、『T2』(91)が興収95億円、『T3』(03)が82億円とメガヒットを飛ばしただけに、期待されていた『T4』。メガヒットの勝因は、日本のマーケットを意識した宣伝戦略にあったようだ。

6月5日(金)、6日(土)、7日(日)という怒涛の先行上映、その日程に合わせたクリスチャン・ベールご一行の来日、そして『ターミネーター』の1、3、2(賛否両論のあった3作目を真ん中にハサむあたりがニクイ)のテレビ放映と、いわゆる“超大作の宣伝の方程式”をぬかりなくこなした。さらに、シリーズの関連ドラマ「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」(07〜)もテレビ放映し、ジョン・コナーを守る美少女ターミネーター役のサマー・グローらまで来日したりと、連日連夜『ターミネーター』関連の話題がメディアを騒がせたのだ。

本シリーズにとって、日本は実に大事なマーケットだ。北米を除く海外興収でいえば、日本が占める割合が、3作品で平均30%と非常に高い。実際、今回も『T4』の日本の興行成績は、他国のなかでは1位となった。

今回の日本での宣伝戦略の裏には、『T4』の全米の興行が思ったよりも振るわなかったという背景がある。根強い人気のシリーズ最新作として期待されていた『T4』だったが、公開時の興行ランキング1位に躍り出たのは、ベン・スティラー主演作『ナイト ミュージアム2』(日本では8月13日公開) で、約7,000万ドル(約70億円)を稼ぎ出した。『T4』は木曜日の先行公開も含めて約6,530万ドル(65億3,000万円)だったのだ。

『T4』は、シリアスな人間ドラマを丁寧に織り込んだ作品だが、コメディ大国のアメリカ人が、不況にあえぐ今、明るく元気な映画に足を向けたくなるのはわからなくもない。ましてや公開日はメモリアル・デーを含めた連休で、家族連れがファミリー映画に流れたことも大きかった。逆に日本では、見ごたえのある人間ドラマが女性に支持され、『T3』(03)で離れかけたファンさえも呼び戻した感がある。

こういった日米のお国柄の違いで明暗を分けた作品といえば、人気SFシリーズの最新作『スター・トレック』(公開中)が記憶に新しいところだ。全米公開時の3日間で約7650万ドル(約80億円)という全米では本年度ナンバー1のオープニング成績をたたき出したにも関わらず、日本での公開時は初登場4位に甘んじた。日本でのマスコミ試写での評判も非常に高く、MovieWalkerの見てよかったランキングでも上位をキープしている作品だっただけに残念。日本での“トレッキー(「スタートレック」シリーズの熱烈なファンの総称)”が、まだまだマイノリティだったことを実感した。

この後、気になるのは、日本で世界に先駆けて6月19日(金)に先行公開をする『トランスフォーマー:リベンジ』だ。先日、主演のシャイア・ラブーフご一行が揃って来日し、“ワールドプレミア”まで開催したという鼻息の荒さ。今週末の興行ランキングで、本作が『T4』にどこまで食いついてくるか? ぜひ注目して!【MovieWalker/山崎伸子】

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