『モヒカン故郷に帰る』松田龍平ら家族5人が語る撮影秘話

インタビュー

『モヒカン故郷に帰る』松田龍平ら家族5人が語る撮影秘話

松田龍平主演映画『モヒカン故郷に帰る』(4月9日公開)は、文字どおり、モヒカン頭の長男が、妊娠した恋人を連れて7年ぶりに故郷へ帰るというシンプルな物語だ。でも、話の肉付けが素晴らしく、連打される小ネタの笑いが無防備だった琴線と涙腺を刺激していき、気がつけば思わず感涙させられる。この素敵なホームドラマを奏でた、松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大に直撃インタビュー!

松田が演じるのは、モヒカン頭の売れないバンドマン永吉役。ガンを患う頑固おやじの治役を柄本が、母・春子役をもたいが、帰省中の真面目な弟・浩二役を千葉雄大が、永吉の妊娠した恋人・由佳役を前田敦子が演じる。舞台は、戸鼻島という架空の島で、広島の瀬戸内海の四島でオールロケを行った。

メガホンをとったのは、『南極料理人』(09)や、『横道世之介』(13)の沖田修一監督。初タッグとなった松田は「どういうカットが欲しいのか、沖田さんには敢えて聞かずにやっていたんですが、『この感じ、良いな』と思った時にOKが出たりしました。それは感覚の話なので、勝手に僕がそう思っているだけなのかもしれないんですけど、そういうことがうれしかったですね」。

松田は恋人役の前田について「初めて会った気がしなかったです。映画にすごく詳しいので、格好良いなと思いました」と印象を述べる。前田は「もっと寡黙な方だと思っていたけど、意外にもすごく楽しい方でした。現場がほのぼのとしていたのは、松田さんのおかげもあるのかなと。楽しいものは楽しいと、いっしょに思ってくださる方でした」と笑顔で語る。

父親役の柄本は「僕は(松田)優作さんと同じ劇団にいたことがあり、そういう意味で親子役をやらせていただいて感慨深いものがありました」と言葉をかみしめる。「初めての共演だったけど、毎年1回会っているので、初めてじゃないという感じでした」と言う。

永吉が病床にある父のために、父が大ファンの矢沢永吉になりすまして会いに来るシーンは、切ないが笑いを誘う。

松田は「いろいろと矢沢さんの映像を観たりしましたが、それをマネてやるのは永吉っぽくないなあと。バレてもいいかくらいのテンションで行ったら、意外と信じてもらいびっくりした!みたいなことなのかなと。そういう意味では、柄本さんのリアクションがすごかったです」と感心する。

柄本は笑いながら「まあ、脚本が面白いんですよ。でも、“矢沢永吉”とあったので、最初は矢沢永吉さんご本人が出てくるのかなと思いました(笑)」と言うと、もたいも「私もそう思いました。ゲストなのかなと」とうなずく。

松田と千葉演じる兄弟の母親役を演じたもたいは「兄弟って、一般的に意外と似ないんです。同じように育てたはずなのに、何でこんなに違うの?と、本当に思えたところが面白かったです。7年ぶりに会った息子(永吉)に『相変わらずバカだよ、こいつは』と、ちゃんと思えましたが、それは松田さんの演技のおかげです」と感謝する。

柄本は「雄大くんが、外で農作業をしている姿が、女の子にしか見えなかった」と千葉をいじると、前田も「かわいかったです!帽子にピンクが入ってましたよね?」と笑う。

千葉は「入っていました。おかげさまで、いろんな人からかわいいと言われました(笑)」と照れる。

松田は、永吉役を演じ、家族についてもいろいろと考えたと言う。「これまで好き放題やってきた永吉が7年ぶりに帰ってきて、自分の父親が死に向かう姿を目の当たりにし、いままでどおりじゃダメだなと思う。彼がそう気づく話でもあり、それを取り巻く家族の物語。最終的には、前田さん演じる由佳と家族を作っていくところに、意識が移行していく。家族の誰かしらに、自分を置き換えて共感を持ってもらえると思います」。

沖田組で、絶妙なアンサンブル演技を見せてくれた5人。『モヒカン故郷に帰る』は、丹念につむがれたオリジナル脚本で、最強の5人が互いに引き出し合った、新鮮で味わいホームドラマだ。【取材・文/山崎伸子】

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