アニメ映画史上、最高にゆっくりなキャラ、ナマケモノに魅せられる!
3月4日に全米公開され、ディズニー・アニメーション史上No.1のオープニング興収を記録し、なんと3週連続首位を獲得した話題作『ズートピア』が4月23日(土)より公開される。本作では、アニメ映画のキャラクターとは思えないほど超スローな動きをするナマケモノのキャラクターが、シュールな笑いを誘う。
主人公は、警察官になることを夢見るウサギのジュディだ。でも、実際、警察官になっているのは、サイやカバなど大型動物ばかり。ジュディは諦めずに努力して警察学校を首席で卒業し、ウサギで初めての警察官になる。そして、動物たちが人間のように暮らす楽園“ズートピア”に赴任し、大奮闘していく。
注目したいのは、ズートピアの免許センター職員として働くナマケモノのフラッシュだ。ジュディたちは急いで作業をしてほしいのに、フラッシュはあくまで超スロー・ペースを崩さない。パソコン入力から話し方、笑い方まで、コマ送りレベルの遅さで思わず失笑する。
本作を手掛けたのは、『塔の上のラプンツェル』(10)のバイロン・ハワード監督と『シュガー・ラッシュ』(12)のリッチ・ムーア監督だ。2人が来日した時に、ナマケモノのラッシュの魅力について語ってくれた。
リッチ・ムーア監督「奇妙だけどチャーミングで、穏やかな良いヤツなんだ。実は、キリスト教の7つの大罪のなかに、怠慢と怠惰というものがあるんだけど、ナマケモノは英語で怠惰“スロース=sloth”と言うんだ。そういう意味では汚名を着せられたかわいそうな動物だとは思うよ」と、ナマケモノ自体に同情する。
フラッシュの間を描くのにはとても苦労したそうだ。「笑いのツボをつくタイミングを図るのがすごく難しかったよ。早く情報を聞き出したくて、ものすごく焦っているジュディと、極めてマイペースでノロノロと作業をするフラッシュとの掛け合いというチグハグさが肝となるからね」。
バイロン・ハワード監督は、フラッシュのキャラクターのディテールについて、とっておきの情報を教えてくれた。「いまから話すのは、キャラクターのデザイナーから聞いた初出しの情報だよ(笑)。フラッシュはパチンと止めるクリップオン式のネクタイをつけているんだ。なぜかというと、以前はちゃんとネクタイを巻いていたんだけど、あまりにも時間がかかりすぎて、遅刻しちゃうから、クリップオンのタイプに変えたそうだ。キャラクターデザインについても、すごくこだわっているだろ」。
最後にバイロン・ハワード監督は、『ズートピア』のテーマについてこう語った。「世の中は甘くないということだ。ジュディは、小さい頃から夢や目標があって、この世の中を変えたい、自分がやっていることを認められたいという思いはある。それは、私たち人間にもあることだ。でも、実際に、現実社会に足を踏み入れてみると、生きていくことは、やっぱりすごくタフで難しいことだと気づく。何かに道を阻まれたり、期待通りに物事は進まない。でも、ジュディは、自分自身の欠点に気づいて、それを勇敢に受け入れていく。そういうところでも共感してもらえるキャラクターになったと思う」。
まさに、『ズートピア』は、人間界にも共通する人生の応援歌だ。是非、子どもだけではなく、いまを生きる大人たちにも観てほしい。【取材・文/山崎伸子】