ジョディ・フォスター、監督を目指したのは6歳の時!
女優としてだけではなく、いまや監督としての風格もまとったジョディ・フォスター。今回、来日した彼女が引っさげてきた監督4作目は、ジョージ・クルーニーやジュリア・ロバーツとのタッグ作『マネーモンスター』(6月10日公開)だ。ジョディにインタビューし、ジョージやジュリアとのエピソードの他、監督業への思い入れについても話を聞いた。
『マネーモンスター』は、生放送の同名人気財テク番組をジャックした犯人と司会者や番組関係者とのやりとりを、「24-TWENTY FOUR-」よろしく、リアルタイムで追っていく社会派サスペンス映画。株売買にまつわる金融界の闇を暴き、格差社会の問題に一石を投じる野心作だ。ジョディは『それでも、愛してる』(09)以来7年ぶりにメガホンをとった。
本作で銃を向けられる番組のパーソナリティ、リー・ゲイツ役を演じたジョージは、主演兼プロデューサーでもある。彼自身も近年は監督業やプロデューサー業にも力を入れているからこそ、今回ジョディとはとても良いコラボレーションができたようだ。
「ジョージは、最初の段階で良いアイディアを出してくれたの。なかでもお気に入りは、番組のオープニングでダンスをするというアイデアよ。今回は役者の視点から多くの意見を出してくれたの。やっぱり自分が監督をしているからこそ、現場では監督が自由に仕事ができる場所を作ることが一番重要だとわかってくれていたと思う」。
ジュリア・ロバーツは、番組のプロデューサーであるパティ役を演じた。ジョージとジュリアは、『オーシャンズ12』(05)以来11年ぶりの共演となったが、共に同じ部屋に身を置くシーンは最初と最後だけで、あとはモニターを通してのやりとりとなる。
「ちゃんと物語を伝えていくためには、これだけの力のある2人が必要だったと思う。また、彼らは友だち同士だからかもしれないけど、私自身もわからないケミストリーが生まれ、それが作品に生かされたわ」。
生放送の番組のなかで事件が進行していくという特異な作りの本作では、テレビ番組用のカメラ4台と、映画用のカメラを駆使するというトリッキーな撮影方法が取られた。ジョディは脚本作りに何年もかけ、そこから綿密な準備をして臨んだと言う。
「私は前もって考え抜いてすべてを準備し、必要な各部のスタッフと蜜にコラボレーションをしていったの。選択したことすべてにおいてちゃんと理由があるし、非常に明快よ。みんなに『準備万端よね?』と確認してから、撮影をスタートさせたわ。自分が監督としてやりたいビジョンをみんなが理解した状態で撮影が始まるから、電光石火のごとく早撮り。そうすることで、自然発生的な魅力が作品に加わるの」。
スタジオにいるリーと犯人、コントロールルームでリーとやりとりをするパティ、株取引の暗躍に関わった人々、固唾を呑みながら番組を観ている視聴者と、いろんな視点からの映像が交錯する本作。しかも、放送用カメラと、映画用カメラには互換性がなく、同じシーンを繰り返し撮影しなければいけなかった。ジョディは「これまでの監督作のなかでいちばん大変で、達成感も他の作品にはないものを感じたわ」とうなずく。
「スピルバーグ監督の映画みたいに予算はないし、撮影期間が47日間と短かったから、この映画を企画すること自体、不可能に近いことだったのかもしれない。撮影を終えても、編集の段階で何千フィートという映像素材があったし、よほど計画性があり、しかもクレイジーな人間じゃないとこの映画は作れなかったんじゃないかしら。だから、次回作はより自由に作れるような作品を撮りたいわ」。
子役からデビューした名女優ジョディは、監督業への思いをこう吐露する。「私は、小さい時からとにかくやりたかったのが映画を監督することだった。映画のストーリーテリングというか、感情面と、技術的な側面に6歳の頃からずっと興味を持ってきて、いつか映画を作りたいと思ってきたの。何にワクワクするかというと、脚本を読み、自分の心がすごく動かされた時、この経験をどうやったらそのままスクリーンに届けられるのかと考えることよ」。
『マネーモンスター』を観れば、ジョディの監督としての資質の高さにうなる。それは、長年、そうそうたる名監督との仕事で培ってきたスキルや人脈などはもちろん、幼き日に描いた夢を実現させようと邁進してきた情熱が実を結んだものに違いない。女優ジョディ・フォスターの魅力をいまさら語るのは野暮な話だが、本作のように力強い作品を撮り、さらに来日していろんな番宣に出て奮闘している監督ジョディ・フォスターも最高にカッコいいと思っている。【取材・文/山崎伸子】