綾野剛&YOUNG DAIS&植野行雄の同世代トーク!脂の乗った年齢をどう生きる?
『凶悪』の白石和彌監督が「稲葉事件」と呼ばれる実際の事件を元に描く問題作『日本で一番悪い奴ら』(6月25日公開)。本作で、共犯関係を結んでいく役柄として出演した綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄(デニス)にインタビューを敢行。“同世代”でもある3人に、共演で得た刺激を聞いた。
悪事に手を染めていく刑事・諸星(綾野)、諸星に“S=スパイ”として仕える太郎(DAIS)、同じく“S”となるパキスタン人・ラシード(植野)として共演した3人。彼らが絆を育んでいく様は、賑やかな青春劇のような瞬間として描き出される。30代といえば若手とベテランのはざまの年代に当たるが、仕事をする上で年齢について意識することはあるだろうか。
綾野「30代半ばの僕たちは、今一番、脂が乗っている世代ではあります。何かに負けるとかではなく、その脂にあぐらをかかないようにしようという意識が強いです。僕は行雄くんが出ている番組だって見ますし、ライブをやっているときも全力で応援しようと思っている。DAISくんに『この前の映画見たよ、よかったよ』と言われると、もっと『よかった』と言われたい。お互いにここで気を抜いている場合ではないので、今こそ気を引き締めてやりたいなと思っています」。
DAIS「20代の頃と比べると、30代になって体力が落ちてきたとかもあると思いますが、年齢を重ねることで知識も増えるし、その中でいろいろなことを自分でチョイスできるようにもなってくる。20代の頃にがむしゃらにやっていた努力を、30代になってもいかに続けられるかということだと思うんです。年齢が変わっても自分の本質というのは変わらないと思うので、今までもこれからも、自分を表現していくということに関して貪欲でありたいと思っています。これは自分にとって、いつまでも変わらないものだと思います」。
植野「僕は今回、2人と同世代だということは意識してしまいましたね。その2人から『こんなに努力してんねや、こんなに気合が入ってるんや』ということを目の当たりにして、自分も本当に気持ちが変わりました。お笑いをやっていてお客さんが15人のときや地獄の営業だってあります(笑)。そんなときこれまでは『今日は流して行こうか』と思うこともあったけれど、一つ一つの舞台にめちゃくちゃ気合を入れてやっていこうと思うようになりました。階段を上っていくというのは、こうやって一つ一つに気合を入れていくことなんやろうなと思って。ものすごく刺激になりました」。
綾野「そんなふうに、映画の撮影がライブにも影響していたとするならすごくうれしいね」。
DAIS「本当にそうだね」。
和気藹々と笑顔を見せ合う彼ら。綾野はモノづくりをする上では「コミュニケーションが欠かせない」というが、その思いは年齢を経て変化してきたものだという。
綾野「僕は25歳くらいのときは、誰にもわかってもらえなくてもいいと思っていた。コミュニケーションなんてとりたくなかったですし、『俺は役作りをしたいから話しかけないで』というスタンスでした。きっと、それがかっこいいと思っていたところもあったんです。でも結局、ひとりの考えはたかが知れているんです」。
キャリアを重ねるごとに、作品はひとりで完成するものではないと痛感した。今回も3人の絆を演じる上では、劇中同様に密に関係性を作り上げたという。
綾野「主役にいる人が一番上というわけではなく、僕らは同じ土俵に立って、誰かの人生を生きるわけです。それはDAISくんにも行雄くんにも伝えました。キャリアなど関係なく、3人でよく『ここはどうしようか』と話し合いながら作っていきました。僕らは違うジャンルから集まっていますが、それは劇中の関係性とも重なるもので。多国籍の人間がひとつの疑似家族を作ったわけです。僕は、それこそが本作の強度だと思っていて。愛情を持って関係性を作っていったのを今でもよく覚えています」。
植野「そう!ホンマにみんなが同じ舞台におるから。僕も最初はモゾモゾしていたんですが、みんなが話しかけてくれたり『今のよかったよ』と言ってくれたりすると、それが自信につながって、『もっとやってやろう』と思えたんです。僕なんか自分のことをやるのに必死なのに、剛くんは僕らのケアもしてくれて…。本当に同い年か!?と。とにかく刺激的で楽しくて、この現場が8年くらい続けばいいと思った!(笑)」。
刺激し合い、本気でぶつかり合った同世代の3人。“極悪な”奴らを演じた彼らが、ワイワイと少年のような笑顔で語り合う姿が実に清々しい。是非とも彼らの化学反応をスクリーンで堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】