行定勲監督「映画の力を信じて良かったなと思います」
6月2日から約1か月にわたって開催されていたショートフィルム映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2016(SSFF & ASIA)」。その締めくくりとなるクロージングセレモニーが6月26日、東京・玉川のiTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズにて行われた。
セレモニーではまずロバート・デ・ニーロ、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット共演、マーティン・スコセッシ監督の『オーディション』(The Audition)が上演され、その後「ミュージックShort部門」「ミュージックVideo部門」の優秀賞が発表された。
『人生のソリューション』でミュージックShort部門優秀賞を受賞した永田佳大監督は「作り手としては、作ってしまったら後は(視聴者に)どう受け止めてもらうかが全てなので、こうした賞をいただけて本当に幸いです」と謝辞を述べた。
一方、石崎ひゅーいの楽曲「花瓶の花」から生まれたミュージックビデオ『花瓶に花』でミュージックVideo部門優秀賞を受賞した松居大悟監督は「今までは音楽にぶつかるように映像を作ってきましたが、今回初めて“音楽に寄り添おう”という気持ちで作りました。(優秀賞受賞という結果に)石崎ひゅーい君の音楽も含めて、僕ら製作陣の思いが肯定されたようで嬉しいです」と喜びを語った。
また、第5回観光映像大賞(観光庁長官賞)には行定勲監督『うつくしいひと』が選ばれ、同作の特別上映が行われた。上映後には行定監督のほか、同作に出演した橋本愛、姜尚中、高良健吾、米村亮太郎も登壇してのトークセッションが行われた。
熊本県を舞台にした同作に出演した橋本は「この作品がなかったら、私自身も(震災に対して)手も足も出なかったでしょうから、この映画に出演して皆さんに見ていただいて、その収益を送ることで(熊本県への)橋渡しができた、物理的にお手伝いできたことが光栄です」と語った。
また、高良健吾は「震災前、震災後というものがあるとしたら、震災前の熊本の映像を残せたことは良かったと思うし、震災があったからこの映画が全国の多くの人たちに見てもらえたんだと思う。そう考えるとこの映画にはすごく意味があったと思います」とコメントした。
行定監督は「(震災後の今)この映画を熊本の人たちに見せるのはどうかな、辛い記憶を思い出させるのではないかな、という思いもありました。この映画に映っている70パーセントくらいの場所はもう姿を変えてしまっている。ただ、熊本の人たちはこの映画を見て逆に『この姿を取り戻そう、さらに新しい何かを作っていこう』と励みにしているそうです。もしそういう気持ちになってもらえているんだとしたら、映画の力を信じて良かったなと思います」と締めくくった。
世界各国から集まった作品の中から約200本のショートフィルムを1か月にわたり上映してきたSSFF & ASIA 2016。早くも次回開催に向けての動きもあるということで、今から来年が楽しみだ。【Movie Walker】