長谷川博己&石原さとみ、『シン・ゴジラ』の新しさは“リアリティ”と“再定義”
全貌が明かされなかったため、様々な憶測を呼んでいた『シン・ゴジラ』がついに公開された。「エヴァンゲリオン」の庵野秀明が総監督、シリーズ初のフルCGで描かれるゴジラ、総勢328名のキャスト…。これまでにない試みが満載だが、その新しさの本質は何なのか?出演者の長谷川博己と石原さとみに、それぞれが感じた『シン・ゴジラ』の新しさを聞いた。
「胃が痛くなるぐらいのプレッシャーはありました」(石原)
60年以上の歴史を持ち、全世界的な人気を誇る「ゴジラ」シリーズだが、意外にも長谷川には気負いはなかったという。「周りの出演者の方は『すげぇ、ゴジラの現場だ!』って興奮していたんですけど、そういう感覚よりも、その群像劇の中でキャラクターをどう演じるかばかり考えてました。もちろん『ゴジラ』作品は好きですし、過去作もリスペクトしているんですけど、ゴジラ映画はやっぱりゴジラが主役だと思ってましたし、テンションは普段通りでしたね」。
この反応に石原は「信じられない!」といった様子。それもそのはず、「ゴジラのオファーがきた時、よっしゃーーーっと家で叫びました」とコメントを発表していたほど喜んでいたからだ。「単純に『やった!ゴジラに出れる!』と思いました。しかもヒロインですからね。長谷川さんは主演だし、きっと喜んでいるんだろうなと思ったんですけど、現場で平然としていたんですよ。『えっ、ウソでしょ!?』って思いました(笑)」。
しかし、台本を読んだ時点で石原の喜びは不安に変わった。「もちろん『ゴジラ』という作品の大きさもありましたけど、台本がト書きも含めて本当におもしろかったんです。読んだ瞬間にちょっとひるんじゃって、その後どうやってこの役を演じていこうかって、自分の立場を客観視する度に気分が悪くなるぐらいのプレッシャーはありました」。
石原との共演シーンが多かった長谷川も「さとみさんの役は日系三世のアメリカ人という難しい役だったから、日本語と英語の両方をしゃべらないといけないし、かなり大変だったと思いますよ」と労う。「彼女の苦労を考えたら、僕の苦労なんて大した事なかったんじゃないでしょうか」と謙遜していたが、その努力は現場の誰もが認めていたようだ。
「今回のゴジラに非現実的な描写は一切ない」(長谷川)
様々な試みが盛り込まれ、夏のエンタメ大作でありながら強いメッセージ性もあわせ持っている『シン・ゴジラ』。とはいえ、社会的なメッセージ、特に“核”に関する言及はこれまでのシリーズでも散々扱われてきたテーマだ。もちろん『シン・ゴジラ』にもその要素はあるが、別の新しさを提示していると二人は言う。
長谷川が注目するのは“リアリティ”だ。「一番の新しさは圧倒的なまでのリアリティです。過去作にはちょっと非現実的な描写のシーンもあったんですけど、今回は一切ない。リアルなディザスタームービーであり、本当に起こりそうな災害のシミュレーションであると思います」。
石原はゴジラという存在の“再定義”に新しさがあるという。「『シン・ゴジラ』は東日本大震災を経験した日本に向けて作られたものだと思うんです。ゴジラとは何なのか、その捉え方がこれまでの作品とは大きく違うんです。観客のみなさんにも3.11以降の経験・知識があると思うので、それをイメージして、『ゴジラとは何か?』という問いに自分なりの答えを見つけてほしいですね」。
“リアリティ”と“再定義”。二人の回答は『シン・ゴジラ』のテーマであり、2016年に日本製「ゴジラ」を復活させる理由を端的に表しているかのようだった。【取材・文/トライワークス】